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Pioggia #1 side N ~Naoki Sugano~

『朝は晴れていますが、お昼辺りから雨が降ります。今日は必ず、傘を持ってお出かけください。』 朝のニュース番組で伝えられた天気予報は的中。昼前から降りだした雨は、徐々に激しくなっていった。 「ちぇっ。モロ的中じゃね?あーやっぱり...真...誘えば良かったなぁ...」 窓に叩きつけられた雨を見ながら呟いた。三連休の初日の今日から、俺の二人の母親は旅行に出掛け、家には明後日まで俺一人。家に泊まりに来ないかと真祐を誘いたかった。しかし、それを口に出す勇気がなく、すぐに諦めた。次に考えた誘い文句は、 『三連休の初日、映画にでも観に行かないか?』 だった。映画ならまだハードルが低く、誘いやすいと考えた。明日こそ絶対に誘うと毎晩心に誓った。何度となくチャンスもあった。けれど、結局言い出せなかった。こんな簡単なことなのに。 でも...本当に言いたい言葉は...また別の言葉で... それを言い出すと、関係性が崩れてしまうような気がして... その言葉を...もう何年も言い出せずにいる。 「俺って根性無しだよなぁ...ホント。」 スマホを手に取り、タップしてある画像を引き出した。それは、この前、真祐んちに泊まった時、密かに撮ったアイツの寝顔。 「はぁ......どんだけかわいいんだよ...コノヤロー...」 画面にキスをした。 雨足は更に強くなりつつある。天気予報によると、雨は明日も続くらしい。 「酷くなる前に、三日分の食材買って来るか!母ちゃん達帰ってきて、有り合わせで料理作ったら、間違いなく抹殺されるわ、俺。」 重い腰を上げ、出掛けようとソファーから立ち上がった時、家のインターフォンが鳴った。画面を見れば、真祐が映し出されていて、俺は応答ボタンを押した。 「真?どうした?」 真祐からは何の応答もない。慌てて玄関を開けると、ずぶ濡れの真祐が立っていた。 「真!どうしたんだ?こんなに濡れて!とにかく上がれ!」 そう言って真祐の手を引き、家に招き入れた。その手は、尋常じゃないほど冷えきっていた。 「大丈夫か?ひとまず、風呂だな。今、風呂沸かしてやるから。」 「直..….」 小さく俺の名を呼んで、真祐はそのまま意識を失い、俺の腕の中へ落ちていった。

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