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Pioggia #3 side N
「うっ......うっ......」
心配になって再び脱衣場へ行ってみると、隣の浴室から、真祐の小さい嗚咽が聞こえてきた。
「真...大丈夫か......?」
小さくノックをし、ドア越しに話し掛けた。
「うっ......うん...」
「そっか。ゆっくり温まれよ。」
「直くん......あの......」
「真?無理に言わなくていいよ...言いたくなったらでいい。」
「うん......ありがとう…」
「おじさんには連絡しておいた。今日はこっちに泊めることと、真が落ち着いたら送って行くって言っておいた。」
「うん...」
「スゲー心配してた。いい親父さんだな。」
「.........何か...ごめん...予定...台無しにしちゃって......」
「予定なんてないよ。本当はさ、お前誘って映画にでも行こうかなって思ってたんだ。」
「なぁんだ...誘ってくれれば...良かったのに...」
真祐の意外な言葉に動揺し、咄嗟に嘘をつく。
「だっ...だって、お前が来るちょっと前に思い付いたんだもん。仕方ねーだろ?」
「そっか......」
「なぁ...覚えてる?幼稚園の時のあのこと...」
「うん......あれから僕達...とても仲良くなった。」
「そうだな...年長組の奴らから俺がボコられてた時、お前...守ってくれてんだよな…小さい体で上から覆うように庇ってくれてさ。」
「うん。」
「おかげで俺はかすり傷。でも、お前は病院行き。」
「病院行きって言ったって…大したケガでもなかったし…入院だって、様子見の数日だったし…」
「そうだけど…」
「それより、直くんはそれまで僕に酷いことばかり。女の子と一緒にいるだけでからかうし、描いてた絵はグジャグジャにするし、読んでいた本は取りあげるし、履こうとしていた上履きは園庭に放り投げる。それから...」
「わかった、わかった。本当にごめんって。若気の至りだ。許してくれよ。」
「あはは...はは...」
「でも...よく助けてくれたよな...そんな酷いことするヤツなのに...」
「......ねえ、直くん...」
「うん?」
「僕...もう...疲れちゃった...」
「真?」
「......」
風呂場からは何の返事もない。嫌な予感がした。
「真?真!入るぞ!」
慌てて扉を開けると、浴槽の縁に項垂れるように倒れている真祐がいた。
「おいっ!真!しっかりしろ!真!」
服のまま浴槽に入り、力任せに真祐を浴槽から離し、腕の中に引き入れた。
「おいっ!真!真!」
声を掛けるも反応がなかった。
なぜなら…真祐は俺の腕の中で...寝息を立てて眠っていたから。
俺は脱力し、浴槽の中にへなへなと座り込んだ。
「ビックリさせるなよな!っーかさ、俺、何回着替えれば良いわけ?ほらっ、真!風呂上がるよ!ベッド連れて行ってやるから...もうちょっとだけ頑張れ!」
真祐を肩に担いで風呂から上がる。真祐はもうすでに何かうにゃうにゃ言っていて、ほぼ熟睡に近い。脱衣場まで真祐を運び、何とか体を拭いてやって、ベッドまで運んだ。初めて目の当たりにした真祐の全裸姿。神々しいまでに艷やかな肌と、思わず唇を寄せたくなるようなピンク色の胸の二つの実。さっき、体を拭いた時の感触が相まって、目の前であどけなく眠る真祐の全てが、徐々に俺自身を興奮させる。
バカ!落ち着け!俺!
落ち着かなければ...そう思えば思うほど、俺の上に股がり、啼き続ける真祐の姿を想像してしまい、頭から離れない。完全にそそり起った自分自身を見て、冷静になることを放棄し、俺は一人、風呂場で自分自身を慰めることにした。
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