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期待 #1 side T

その日は三連休の最終日で、我が家の長男、真祐の親友、菅野直生君は何故かスーツという珍しい出で立ちで現れた。三連休の初日、僕はまだ体の調子が悪くてその日から真祐が、その前日から次男の冬葉がいないことに気が付いたのは、連休の二日目の昨日のことだった。 「ようすけ...」 「うん?」 「ふたりだと...しずか...」 「そうだな。ちょっと前なら当たり前だったのにな。寂しい?」 「うん...」 「でも、もうすぐ冬葉が俊介さん家から帰ってくるからまた賑やかになるよ。真も明日帰るって。さっき連絡があった。」 「真くんは...どこ?」 「直生ん家。お袋さん達、旅行に行ってていないんだって。」 「直くん......」 その続きを言おうとしたけど辞めた。 「直生がどうした?」 「ううん...何でもない...」 程なく冬葉が帰って来て、我が家には活気が戻った。 そして今、真祐も帰ってきたのだけれど、真祐を送ってきてくれた直くんはスーツ姿で緊張の面持ちで玄関に立っている。 もしかして...もしかしたら...僕はちょっとだけ期待する。 「どうした?直生。その格好は。」 「変でしょう?どうしてって何度も聞いてるのに、全然教えてくれないんだよ。」 隣に立つ真祐は、半ば呆れ顔でそう言った。 もう...真くんったら...そんな顔しないで... もしかしたら...世紀の瞬間かもしれないのに... 直くんは深呼吸した後、その場で土下座をした。 「葉祐さん、冬真さん、一生のお願いです!何でもします!だから、俺をここに置いてください!ここに下宿させてください!ここから大学に通わせてください!お願いします!」 葉祐も真祐もあまりの驚きに瞬きすらも忘れ、時が止まったまま。冬葉は遊びと勘違いしているのか、直くんの隣で土下座をし、一緒に「お願いします。」を繰り返していた。そして、僕は待ちに待ったその瞬間を前に...やっと勇気を出して一歩を踏み出した直くんが...次に何を言い出すのか...期待で胸が膨らんでいた。

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