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かくれんぼ #1 side F ~Fuyuha Satonaka ~
冬くんはね、今、かくれんぼしてるの。
葉祐パパと冬真パパと冬くんと三人でキッチンに隠れているんだ。キッチンの向こうにはね、みんなでご飯やおやつを食べるテーブルがあるんだけど、今、そこには真ちゃんと直くんが座ってるの。でもね、何か変なんだよ。真ちゃんと直くんは、とっても仲良しさんで、いつもはお隣さんで座るのに、今は『こんにちは』するみたいに座ってるの。変なの...
「うわぁ...まさしく冷戦状態。悲惨だね。こりゃ。」
葉祐パパがキッチンから少しだけ顔を出して言ったの。
「れいせんってなぁに?」
冬くんが何度聞いても、葉祐パパはテーブルにいる真ちゃん達に夢中で、何も教えてくれない。
もぉ...葉祐パパったら!
そうしたらね、冬真パパが教えてくれたんだ。
「そうだね...ケンカしているようには…見えないけど...本当はケンカしてる…ってことかな...」
「ふ~ん...パパとふゆくん、なんでキッチンにかくれてるの?」
「夫婦喧嘩は犬も食わないから。」
冬くんは冬真パパに聞いたんだけどなぁ…それなのに、葉祐パパがまた難しいこと言ったよ。冬くんには全然分からないよ。
「ワンちゃん、ケンカたべるの?」
葉祐パパはまだ真ちゃん達に夢中で、冬くんのお話、また聞いてくれない。
ぶぅ~
いつも『人のお話はちゃんと聞かないとダメだよ。』って言ってるのは、葉祐パパなのにさっ。
冬くんが困ってると、冬真パパが言ったんだ。
「ううん...仲よしの二人だから...ケンカしてもすぐに仲直りするから...少し...放っておいた方がいいんだよって...むかしの人...言ったんだ。冬くんには...ちょっとむずかしい...ことばだね...」
「むずかしいことば、いっぱい!だけど、とうまパパがやさしくおしえてくれるから、ふゆくん、わかったよ。とうまパパありがとう♪」
冬真パパはいつも優しくて...それにね...とってもかわいいの。冬真パパ大好き♪って思って、冬真パパのお顔見ていると、冬くんはいつもニコニコちゃんになっちゃうの。テーブルにいる真ちゃんと直くんも、「冷戦」してないで、早くニコニコちゃんになれば良いのにな。
冬くんも葉祐パパみたいに、キッチンから立って、真ちゃんと直くんを見たんだけど...真ちゃんはやっぱり怒ってるみたい。
「し~んちゃん。し~んくん。そろそろご機嫌直してくださいなっ。とにかく誤解!全て誤解だから...」
「誤解も何も...君が合コンに行って、その合コンの画像が僕に送られて来て、君が着ていったシャツに口紅が付いていて、そのシャツを僕が洗った。それ以外、何もないでしょう?そもそも、僕は機嫌なんて損ねていないし。」
「いやいや、きっちり損ねてるでしょ?俺のこと『君』って言ってるし...」
「損ねてません!」
「素直に認めろよ。可愛くねーなぁ...あっ......!」
直くんは慌てて手でお口を塞いで、葉祐パパはジーザス!って言ったよ。真ちゃんと直くんも葉祐パパも難しい言葉ばっかり!冬くんが分かるのは『シャツ』ぐらいだよ。
あ~あ...つまらないなぁ...ケンカ。早く仲直りしてくれないかな...冬くん、みんなで遊びたいよ。
でもね、不思議なんだよ!
葉祐パパが『ワンちゃんも食べない』って言ってて、冬くんもつまらないって思ってる真ちゃんと直くんのケンカを、冬真パパはちょっとニコニコして見ているの。変だよね?だからね、冬くん、冬真パパに聞いたの。
「とうまパパはケンカ楽しいの?」って。
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