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目眩 #1 side S

直くんはずっとクラスの人気者だった。 明るくて友達思いの優しい人。お調子者なのが玉に傷。いつも楽しそうに誰かとワイワイ騒いでいる直くんを、遠くから見ているのが好きだった。 確かに直くんはお調子者。だけど、決して嘘をつくような人ではない。だから、直くんが言うように、彼のスマホから送られてきた合コンの画像も、シャツに付いた口紅も、きっと誰かのいたずらに違いない。そんなことはよく分かっている。でも...頭でそう考えれば考えるほど、直くんが弁解すればするほど、僕の心は暗雲が立ち込めたように晴れず、とても苦しくなった。そして、軽い目眩と頭痛にずっと苛まれている。こんなことは初めてで、どうしたら良いのか分からなかった。だから...出来れば...放っておいて欲しかった。 いよいよ頭痛が限界になって、ここから退出しよう...そう思った時、向かい側に座る直くんの背後を歩く冬真を見つけた。手にはマグカップを持っていて、そこから立ち込める湯気が見えた。僕は慌てて立ち上がり、冬真の手からカップを取り上げた。 「お父さん!何やってるの!危ないじゃない!」 僕の声に冬真はピクリと体を震わせた。マズい...今ので火傷したかもしれない。 「バカ!そんな大きな声出したら、ビックリするだろう?」 直くんは僕にそう言って、続けて冬真にゆっくり語りかけた。 「冬真さん、大丈夫?ごめんね。ビックリさせちゃって。火傷していないかどうか見るから、手を触るよ?良い?」 頷いた冬真の手を取り、直くんはその手をくまなくチェックした。 「うん。大丈夫!火傷はしていない。」 その言葉に僕は安堵した。 「それにしても、手が冷たいね。寒い?寒いから温かいもの飲みたかったの?」 直くんは知らない。冬真の手足が常に冷たいことを... 「ううん...そろそろ二人とも...きゅうけい...した方が...」 冬真の言葉を注意深く聞いていたが、ぐらっと目眩が一層酷さを増した。僕はとうとう立っていられなくなり、その場でうずくまった。 「真!どうした!真!」 直くんの呼ぶ声が徐々に遠くに聞こえる。声が聞こえなくなるまで、そう長い時間は掛からなかった。 そう...僕はそこで意識を失った...

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