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gelosia #3 side N

やっぱり真のそばにいたくて、一人、診療所から里中家に戻った。真が眠っているのは、いつもの子供部屋ではなく、点滴の都合上、ベッドがある葉祐さん達の寝室だった。葉祐さんに入室の許可を得るべくリビングへ向かうと、リビング中にアロマオイルの香りが立ち込めていた。 「足湯ですか?」 そう尋ねると、葉祐さんは右手の人差し指を口元に当て、小さく「しーっ」と言い、視線をソファーに送った。ソファーには猫のように小さく丸まって眠る冬真さんがいた。心なしかいつもより白く見えた。それから葉祐さんは、キッチンカウンター誘うような仕草を見せ、俺は素直に従った。 「ごめんな。今、やっと寝たんだ。」 「具合...悪いんですか?」 「大したことないよ。体がガチガチだったから、足湯をしてやってんだ。少しはリラックスできたんだろう。真のことが心配なんだ。真に起こる悪いこと全て、自分のせいだと思っている節があるからね。そんなことあるはずないのに...」 「すみません。」 「お前が謝ることは何もないさ。ところで、冬葉は?」 「まだ、先生の家です。スゲー楽しそうでしたよ。好奇心旺盛な冬葉には、診療所はワンダーランドみたいです。聴診器とか臓器の模型とか、とにかくたくさんの物に興味津々で、若先生のお父さんが質問攻めに遭ってました。それでも、若先生のご両親はスゲー嬉しそうで...」 「そっか...それを聞いて俺も肩の荷が少し楽になったかな。」 「えっ?」 「なぁ、直生。」 「はい?」 「少し休憩しないか?お前も疲れただろう?ちょうどコーヒー淹れようかなって思ってたんだよ。」 「でも...」 「真なら大丈夫。逆算してもあと一時間は起きないよ。それに無線も入れてあるから、向こうで変わったことがあれば、ここから聞こえるし。」 葉祐さんはキッチンにあるスピーカーを指した。 「じゃあ...頂きます。」 「おうっ!」 葉祐さんは店と同様、コーヒーをかなり丁寧に淹れた。その後、コーヒーをキッチンカウンターに置くと静かに隣に座った。

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