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gelosia #4 side N
「すみません。何か...ご迷惑掛けてしまって...」
「お前は何も悪くないさ。真の独りよがりに最後まで付き合ってくれただけさ。」
葉祐さんはコーヒーを一口啜ってからそう言った。
「独りよがり?」
「だってそうだろう?あんな画像なんて悪意があるにしろ、ないにしろ、誰かのいたずらなのは明白だ。それなのに、真がうだうだ考えすぎて面倒なことにしちゃっただけの話だろう?普段のお前をきちんと見ていない証拠だ。」
「厳しい...ですね…」
「なぁ、直生?」
「はい。」
「お前…しんどくなったら…いつでもここを...真から離れても良いんだぞ。」
「えっ?」
「ここにいる義務はお前にはない。お前はこの家や俺達に縛られることないんだ。」
「......」
「俺...お前に感謝してるんだよ。色々と複雑なこの家も、お前が来てから笑い声が多く聞こえるようになった。冬真、真祐、冬葉、それぞれ笑顔が増えた。特に冬葉。お前のおかげで冬葉は外遊びが増えた。今じゃ、アイツも日焼けで肌が真っ黒だ。健全で楽しい夏を過ごしてる。してやりたくても、俺には出来ないことをしてくれた。ありがとな。俺達はもう充分良くしてもらったよ。だからこそ、お前には苦しんでほしくない。うちのことでこれ以上、お前に大きな負担を与えたくないんだ。」
「葉祐さん?」
「うん?」
「真にはまだ何も言ってないんですけど...俺...大学卒業して、就職して、ある程度稼げるようになったら、真と結婚しようと思っています。正直、いつになるのかも分からないですし、すでにベストセラー作家になっている真とは、かなり不釣り合いの超格差婚になりそうですけれど。」
「……」
「真ってツンデレっていうか...不安なことも嬉しいことも表に出さないで、すぐ強がって、涼しい顔して何でもないふりして...」
「恋人としては面倒で最悪だな。可愛げが全くねぇ。」
「それでも、そういう真がやっぱり真らしくて…俺...本当に好きなんです。いつもいつも呆れられてばかりで、毎日毎日、怒られてばかりの俺だけど、今回のことで、そんな俺のことを真はスゲー大切に想ってくれていることが分かって…適切な言葉ではないけれど、本当に嬉しかった。体調崩すまで一人思いで悩んで…こんなにも大事にされていたのに、俺は言い訳や弁解ばかりで、真を不安の渦中に一人、置いてけぼりにしてしまいました。ガキの頃から一緒にいて、真の性格は分かってたはずなのに。そういう真を放ってはおけない。だって、俺、やっぱり真が大好きだから。もう真を一人、不安にさせたくないです。ずっと一緒にいたい。あからさまには分かりづらいかもしれないけど、俺の手で毎日喜ばせて、笑顔にして、幸せにしたいんです。」
「本当に面倒なヤツだな…真は。恋人としては面倒で可愛げがなくても、俺にとっては可愛い息子なんだ。どうか幸せにしてやってください。よろしくお願いします。」
葉祐さんは頭を深々と下げた。
今日はたくさんの人に頭を下げられる日だなぁ…
頭の片隅でそんなことを考え、葉祐さんに頭を上げるように告げた。
「しかし......お前...めちゃめちゃドMだな。」
頭を上げた葉祐さんはニヤリと笑い、すかさずそう言い放った。衝撃的なその言葉に、俺はただただ苦笑いするしかなかった。
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