4 / 15

それは、一方的な①

キー・・・ンコー・・・ンカー・・・ンコー・・・ン・・・。 鳴り響くチャイム。 誰もいない、放課後の屋上。 フェンスに正面から寄りかかって、校庭で部活をしてるあいつを見てる。 サッカー、そんなに面白いかねぇ。 爽やかだな。 俺なんかと違ってさ。 「・・・はぁー・・・・・・」 好きだった。 でも、彼女がいるって、今日知った。 そりゃいるよな。 あの爽やかさだもんな。 優しいし、よく気が付くし、クラスでも人気者。 「・・・馬鹿じゃん、俺」 いつまで見てるつもりだよ。 俺は帰宅部なんだし、もう帰ろう。 「・・・帰ろ」 誰がいる訳でもないのに、何気なしに口にすると、思わぬ方向から声がした。 「あれ、もぉ帰っちゃうん?」 「はっ!?」 屋上への出入口の上、頑張れば上れるような場所に、そいつはうつ伏せで寝転がっていた。 両手で頬杖をついて、びっくりして見上げる俺を見下ろしてる。 金に近い茶髪。 いかにも不良ですって感じだ。 「な、だ、だれ・・・?」 「俺?相良(さがら)結斗(ゆいと)」 「さ、さがら、ゆいと?」 「よろしこ」 「・・・はぁ」 何なんだ、こいつ。 てか、人いたんだ・・・、独りだと思ってたのに・・・。 「君さぁ、いっつもそこで校庭見てるよねぇ」 「ぇ・・・?」 何で知ってんだ。 まさか、こいつも何時もここにいたのか? 「か、関係ないだろ。もう帰るし・・・」 「サッカー部、見てたん?」 「・・・っ」 だったら何だよ。 いいから帰ろう・・・。 そう思い、出口のドアノブに手をかけた瞬間。 「サッカー部に好きなやつでもいるん?」 「っ!?」 自分でも引くくらいびっくりしてしまった。 たぶん、この動揺はサガラにも伝わっただろう。 「お、図星だ?」 「・・・だ、だったら、何だよ」 関係ないだろ。 それに、片思いの上、失恋したんだから。 もう放課後に屋上からこっそり見るなんて真似しねーよ。 「付き合ってるん?」 「んなワケねーだろ」 サガラは帰ろうとする俺にやたら声をかけてくる。 シカトして帰ればいいんだけど、なんとなく会話の相手をしてしまった。 「じゃ、俺と付き合う?」 「・・・はあ?」 何だこいつ、意味わかんない。 からかってんのか? 「付き合うワケねーだろ。意味わかんね」 「だって、サッカー部の好きなやつとは付き合ってないんでしょ?今日は何時もより帰るタイミング早いし、そいつの事、諦めたんじゃないの?」 「な・・・っ」 何時もより早いって・・・まじでこいつ何時もここにいたんだ・・・。 見られてたんだ・・・・・・。 「だ、だから、関係ないだろ!てか、もお帰るし、話しかけんな!」 「そんな冷たくすんなよ~」 ゆるりとした話し方とは裏腹に、素早い動きで立ち上がったサガラは、屋上出入口と俺の間に飛び降りてきた。 「ぅわっ!?」 「俺さ、そこでサッカー部ずーっと見てる君をずーっと見てたんだよね。で、可愛いな~って」 「はぁ?」 こいつ、一体何を言ってるんだ。 てか近いっ! 「ちょ、近い、離れ・・・」 「名前、教えて?な、ま、え」 何だこいつ、何だこいつ、何だこいつ・・・。 関わらない方がいいって、頭の中で警報がビービー鳴ってる。 なのに、俺は、馬鹿な俺は思わず答えてしまったんだ。 「た、(たちばな)・・・(あきら)・・・」 to be continued

ともだちにシェアしよう!