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それは、一方的な①
キー・・・ンコー・・・ンカー・・・ンコー・・・ン・・・。
鳴り響くチャイム。
誰もいない、放課後の屋上。
フェンスに正面から寄りかかって、校庭で部活をしてるあいつを見てる。
サッカー、そんなに面白いかねぇ。
爽やかだな。
俺なんかと違ってさ。
「・・・はぁー・・・・・・」
好きだった。
でも、彼女がいるって、今日知った。
そりゃいるよな。
あの爽やかさだもんな。
優しいし、よく気が付くし、クラスでも人気者。
「・・・馬鹿じゃん、俺」
いつまで見てるつもりだよ。
俺は帰宅部なんだし、もう帰ろう。
「・・・帰ろ」
誰がいる訳でもないのに、何気なしに口にすると、思わぬ方向から声がした。
「あれ、もぉ帰っちゃうん?」
「はっ!?」
屋上への出入口の上、頑張れば上れるような場所に、そいつはうつ伏せで寝転がっていた。
両手で頬杖をついて、びっくりして見上げる俺を見下ろしてる。
金に近い茶髪。
いかにも不良ですって感じだ。
「な、だ、だれ・・・?」
「俺?相良 、結斗 」
「さ、さがら、ゆいと?」
「よろしこ」
「・・・はぁ」
何なんだ、こいつ。
てか、人いたんだ・・・、独りだと思ってたのに・・・。
「君さぁ、いっつもそこで校庭見てるよねぇ」
「ぇ・・・?」
何で知ってんだ。
まさか、こいつも何時もここにいたのか?
「か、関係ないだろ。もう帰るし・・・」
「サッカー部、見てたん?」
「・・・っ」
だったら何だよ。
いいから帰ろう・・・。
そう思い、出口のドアノブに手をかけた瞬間。
「サッカー部に好きなやつでもいるん?」
「っ!?」
自分でも引くくらいびっくりしてしまった。
たぶん、この動揺はサガラにも伝わっただろう。
「お、図星だ?」
「・・・だ、だったら、何だよ」
関係ないだろ。
それに、片思いの上、失恋したんだから。
もう放課後に屋上からこっそり見るなんて真似しねーよ。
「付き合ってるん?」
「んなワケねーだろ」
サガラは帰ろうとする俺にやたら声をかけてくる。
シカトして帰ればいいんだけど、なんとなく会話の相手をしてしまった。
「じゃ、俺と付き合う?」
「・・・はあ?」
何だこいつ、意味わかんない。
からかってんのか?
「付き合うワケねーだろ。意味わかんね」
「だって、サッカー部の好きなやつとは付き合ってないんでしょ?今日は何時もより帰るタイミング早いし、そいつの事、諦めたんじゃないの?」
「な・・・っ」
何時もより早いって・・・まじでこいつ何時もここにいたんだ・・・。
見られてたんだ・・・・・・。
「だ、だから、関係ないだろ!てか、もお帰るし、話しかけんな!」
「そんな冷たくすんなよ~」
ゆるりとした話し方とは裏腹に、素早い動きで立ち上がったサガラは、屋上出入口と俺の間に飛び降りてきた。
「ぅわっ!?」
「俺さ、そこでサッカー部ずーっと見てる君をずーっと見てたんだよね。で、可愛いな~って」
「はぁ?」
こいつ、一体何を言ってるんだ。
てか近いっ!
「ちょ、近い、離れ・・・」
「名前、教えて?な、ま、え」
何だこいつ、何だこいつ、何だこいつ・・・。
関わらない方がいいって、頭の中で警報がビービー鳴ってる。
なのに、俺は、馬鹿な俺は思わず答えてしまったんだ。
「た、橘 ・・・旭 ・・・」
to be continued
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