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それは、一方的な②
「あっきー!」
「・・・」
「あきちゃん!」
「・・・・・・」
「旭 !」
「・・・・・・・・・何ですか」
俺は今、軽くストーカーにあっている。
昨日の放課後に屋上で突然告白(?)され、今朝からずっと付きまとわれている。
「今日も放課後、屋上行こ?」
「何でですか」
「2人きりになりたいから~」
あはは~と笑って言うのは、例の物好きである相良 結斗 。
屋上で片想いを諦めた俺に、何故か猛烈アタックをかけてきている。
「嫌です」
「何でぇ~?い~じゃん、何時もの日課だったでしょ?」
「・・・」
思い出したくない日課なんですがね。
俺は片想いをしているサッカー部員を屋上から見てて、相良はそんな俺を見てた。
俺は相良の存在に全く気付いてなかったんだけど。
「い~じゃん、行こ。放課後また迎えに来るから」
「いらないっすよ、相良先輩」
そう、相良は3年で俺は1年。
初めて会った時、目立つ不良っぽいのに見たことないなーと思ったのは、帰宅部の1年とヤンキー3年じゃ殆ど接点がないから。
「結斗でいいって、あっきー」
「橘 って呼んでくださいよ、相良先輩」
名前を聞かれ、あっさりフルネームを答えてしまった俺が馬鹿だったんだ。
この人は何と言うか、人懐こいというか、遠慮がない。
すぐ、あっきーとか馴れ馴れしく呼んでくるようになった。
俺は、相手は先輩だし、関わりたくないし、相良先輩ときっちり呼んで距離感を出してるのに、全く気にしてないらしい。
休み時間の度に俺のいる教室に会いに来ては、俺が反応するまで名前を呼ぶ。
「あっきー照れてるん?かぁわい~」
「違います」
この人の思考回路はどうなってるんだ。
やがてチャイムが鳴り、相良は「また来るね~」とへらへら手を振りながらいなくなった。
てかあの人、毎回チャイム鳴ってから教室に帰ってくけど、確実に授業に遅れてるだろ。
むしろ授業受けてるのか?
ちゃんと教室に帰ってんだよな?
次来た時にちゃんと聞いておかないと・・・。
「・・・て、何で俺があいつの心配してんだよ」
昨日の放課後に初めて会って、今朝から休み時間の度に会いに来る、相良結斗。
・・・何で俺の教室知ってたんだろ・・・。
そんな事を考えながら授業を受け、ホームルームを終え放課後に・・・。
「あっきー!迎えに来たよ~」
「・・・相良先輩、折角来てもらって申し訳ないですが俺はおくじょ・・・て、ちょっと!?」
有無を言わさず腕を掴まれ、屋上へと連れて行かれる。
ち、力強い・・・。
「放してくださいよ、行かないって言ってるじゃないですかっ」
「なぁに~?手ぇ繋ぐ方がいい~?」
「はぁ?」
ぱっと腕を放されたかと思ったら、今度は手を繋がされた。
しかも、指を絡ませた、所謂、恋人繋ぎ。
「ちょ、まじふざけ・・・」
「ふざけてないよ、好きなんだもん。ねぇ、俺と付き合おう?」
「・・・っ!?」
何なんだ、こいつ。
「俺、あっきーの事大切にするし、屋上でしてたみたいな寂しそうな顔させねーし、俺はあっきーの事見てるし」
「・・・な・・・・・・」
相良が喋りながら俺を引っ張って行って、屋上に着き、出入口を開けて外の眩しさに目が眩む。
・・・何だよ、寂しそうな顔って。
俺そんな顔してた?
「ね?俺と付き合おう?」
「・・・ぃ・・・意味わかんね・・・」
「今は解んなくてもいいよ、取り敢えず、付き合おう」
あ、付き合おうって、疑問形じゃなくなった。
俺の返事、聞かないつもりだな。
「俺がいれば、サッカー部なんてど~でもいいっしょ?」
「・・・・・・・・・」
どーでもいい訳ないだろって言いたいけど、正直、どーでも良くなったかも・・・。
何か、それどころじゃ、ない。
「・・・・・・・・・と、取り敢えず、だから」
「あは、取り敢えず、ね」
そうでも言わなきゃ、この人は明日も休み時間の度に会いに来るだろうし。
取り敢えず、だ。
手を繋がされたまま、繋がった熱に流された自分に、言い聞かせた。
to be continued
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