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第一章(6)

(……万が一を考えて経皮滲透パッチを貼ったのに、二の腕の内側ではやはり無理か。やはりそけい部近くに貼らないと効きが悪いとセシルに伝えておこう。しかしなんだ、この苦さは)  口のなかに染み出る生唾を何度か嚥下する。すると、ドアの向こうの二人にも動きがあった。 「そんなに怒るなよ、彩都」 「まったく、いつも宣親は乱暴だ。言ってくれたら事前に自分で用意できるのに」 「俺はいつも優しいだろ? それにお前は恥ずかしがってなかなかできないから手伝っているんだ。あれの期間中は耐えるのに精一杯で、サンプル採取の余裕なんてないだろう?」 「サンプル採取だけなら、こんなところにキスマークなんてつけるなっ」  がちゃりとドアが開く音がした。そして一拍置いて、驚きの声が稜弥に投げかけられた。 「――っ、神代くんっ!?」  薬が効き始めて、冷静さを取り戻す背中に投げかけられた言葉はかなり焦った様子だ。稜弥は、ふっ、と息をついて、ゆっくりと振り返る。そこには髪を乱し、シャツの襟元を大きくはだけ、頬を赤く上気させた七瀬彩都が固まって立っていた。

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