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第一章(14)
「彼らは社会での地位を保証されています。確かに都市部でもダウンタウンや郊外に行けばオメガはまだ性産業に従事する人が多いし、そういった差別の対象になっていますが……。それでも保護施設や抑制剤の供給で普通の生活を送る人も多くなりました。それに近年ではアルファとオメガの『番』の間に、さらに優性のアルファが生まれることもわかってきています」
「アメリカでは第二世代、第三世代のアルファやオメガが生まれているのか。優秀なアルファについては国の利益になる人材を育てる特別教育機関『アルファアカデミー』もあると聞く。まったく、日本の実態とは雲泥の差だな」
「確かに日本に帰ってきて、彼らに対する認知度の低さと誤ったイメージには驚きました」
「深夜ドラマやバラエティ番組のあれか。あれは面白おかしくテレビ局が作っているだけだ。まあ、そのイメージが固定化されてしまって、アルファ至上主義思想やオメガに対する差別的認識が植えつけられているのも否めないがな」
昨夜、ニュースで流れていたのは巷で流行っている女子高生のトレンドだった。首に『Ω』とチャームのついたチョーカーを着けるのが彼女たちのファッションの先端らしい。その後のバラエティでは、肌をあらわにするような扇情的な衣装を身につけた綺麗な男が自分のセクシャルをオメガだと言い、クネクネとした仕草でねちっこい言葉を喋っていた。今シーズンの人気ドラマはアルファの傲慢社長とオメガの女性社員との身分差恋愛物だ。彼女は周囲に蔑まれながらも明るく振舞うが、フェロモン抑制剤を隠されてしまい発情期を向かえて社内のアルファの男達に追い詰められてしまう。それを社長が助けに行くというシーンは瞬間最高視聴率を叩き出したらしい。
だが、どれも誤った認識による想像の産物だ。しかし、その誤った認識は現在日本の常識になってしまっている。
「仕方がないとは言いたくはないが……。やはり『桜落の大災禍』から長く鎖国をしていたのは痛かったな。第二性研究についてはすっかり欧米と日本との差は開ききってしまった」
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