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第二章(11)

 やはり宣親が言ったとおり、この日本でのアルファやオメガに対する認識は彼女たち当事者であっても理解が薄いようだ。薬はあくまでも溢れ出すフェロモンと激しい発情を抑えるためだけのもので、根本的にアルファを誘うフェロモンの分泌は無くならないし、発情期が来なくなるわけでもない。オメガが苦しい発情期から逃れたいのであれば、アルファに番ってもらうしかないのだ。 「東條先生の臨床実験では女性に関しては効果を上げているようですが、それですぐに新薬の認定はされないんですか?」 「僕はよくわからないけれど国の方針なのか、男女で効果のある薬じゃないと認可がおりないらしいんだ。この国で認知されているオメガは女性が多くて、数少ない男性オメガのほとんどは未成年者でね。未成年に試薬を試すわけにもいかず、なかなか治験が進まなくて……」 *****  デスクライトだけを灯した部屋のなかで、稜弥は眠るでもなくただベッドに横になって、先ほどの夕食での会話を思い出している。  亜美たちは宣親に教えられた通り、東條大学に在籍する女性のオメガだった。そして柳孝治、彼はあの研究棟の一階、彩都の自室の隣に住んでいると言い、自分はベータだと言った。  あの研究室を初めて訪れた時、彩都と宣親がいた彩都の執務室から微かにオメガフェロモン特有の匂いがした。もしかしたらあれは彼女たちの発情の残り香だったのかもしれない。 (しかし、残り香にしてはやけに生々しく香ってきた……)  急に机の上から響いた呼び出し音で思考を停止させられた。稜弥はベッドから起き上がると放り出していたスマートフォンを手に取る。自分を呼び出している携帯の画面には発信先が非通知と表示されていた。 「――、はい」  若干、警戒しながら電話に出た稜弥の耳に能天気な声が響き渡った。 「いやあ、俺の遠い親戚の稜弥くん。どうだい? あれから二週間ほど経つけれど、少しはみんなと仲良くなれたかい?」 「島田……」

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