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第四章(4)

「なんでもそこの医師たちはみんな、アメリカで第二性検診の資格を取っているという触れ込みだ。ホームページで病院の無料会員になると第二性診断の受付画面に入れて、いくつかの質問に答えたら『あなたは何パーセントの確率でアルファ、またはオメガです』と診断結果が表示される。そして、もっと詳しく知りたいかたは、自宅で簡単にできる検査キットを販売しています、となるわけだ」 「その検査キットには、なにが入っているんだ?」  これさ、と二階堂は、今度は梱包をほどかれた小包をテーブルの上にのせた。 「アルファ、オメガ性の特徴の説明書とキットの使い方、そしていくつかの試薬。結果として疑いありと出たら、当病院はあなたのこれからの生活をサポートします、とそこに書いてある専用窓口に電話をすれば、オペレーターが懇切丁寧に入会案内と受診の手続きをしてくれるという流れだ。ちなみにこのキットは三万円だがキャンペーン価格で今は三十パーセントオフだよ」  面白そうに言う二階堂を睨みつけて、宣親はキットを確認し始めた。 「小学生の夏休みの理科実験セットのほうがまだましだな。唾液だけで調べられる? そんなに簡単に判るのなら、俺の商売は上がったりだ」 「だが、あながち笑い物にはできないかも知れないぞ。うちの第一秘書が試したが、ちゃんとアルファ判定がでたからな」  確かに二階堂の第一秘書に、アルファだと判定をつけたのは宣親自身だ。 「一体、どこがこんなものを作ったんだ。どう考えても日本製じゃ無いだろう」 「それだよ。このキットの噂はSNSで出回っていて、実際に悩んでいる人が試した結果、創世会病院への問い合わせが増えているんだ。しかし創世会病院で抑制剤を処方してもらおうとすると」 「なるほど読めたぞ。入会金と月々の抑制剤にかかる金のあまりの高さに断念する人がいるわけだ」 「入会金は一番スタンダードなコースで三十万、それに月々の会費が二万で抑制剤は保健適用外だから全額請求だ」 「酷いな。普通の会社員では到底、薬を続けるのはかなりの負担だ」

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