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第四章(16)

「う……、ぁ、はあ、はあはあっ……」  普段よりも発情の速度が早い。このままだと本当に目の前の稜弥に淫らな姿を晒してしまう。自分から衣服を剥ぎ取り、勃起した花茎を扱きながら、蕾に指を抜き差しして稜弥に迫ってしまう。「僕をめちゃくちゃにして」と。  のぼせる頭でもそれだけは避けたいと、彩都はもう一度ピルケースを振った。しかし今度は力が入りすぎて錠剤が出てこない。気持ちは焦りと競り上がる淫情でいっぱいになる。とうとう彩都は体の火照りに耐えかねてピルケースを手放すと、はだけられたシャツの残ったボタンを無意識に外しにかかった。大きく開いたシャツに右手を滑らせ、ツンと尖った左の乳首に指が触れると「ああ」と甘い声をあげた。 「……クソッ!」  薄く開いた瞼の向こうで、稜弥がスーツの胸ポケットから取り出した小さな筒状のものを、自分の太腿に突き立てているのが見えた。プシュッ、と圧縮した空気が抜ける音と同時に稜弥が大きく身動ぎをすると、彼がまとう香水の匂いが一層強く辺りに漂った。その香りを吸い込んだ途端、彩都の花茎は触れてもいないのに達してしまった。 「あ……、ああ……」  吐き出した精液と後蕾から溢れる愛液で彩都の下着はぐしょぐしょに濡れてしまった。もう何も考えられない。彩都は右手で弄っていた乳首を摘まみ上げると、左手で濡れた下着に触れようとした。だがそれは稜弥によって阻まれる。 「いや、いや。シたい。出したい、さわって、お願い」  涙で滲む稜弥に彩都は懇願した。稜弥は眉根を寄せたまま、ペットボトルの水を口に含むと彩都の頬を強く掴んで唇を押しつけてきた。 「んんっ、んあっ」  自然に唇が開いて稜弥の舌を迎え入れた。ところが彩都の口腔内に入ってきたのは、楕円形のいくつかの粒と大量の水。反射的にごふっと噎せた彩都に構うことなく、稜弥は舌先で抑制剤を彩都の喉の奥へと押し込むとすかさず新たな水を注いだ。 「うぐっ。ふぁっ、げほっ!」

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