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第五章(4)
「ありがと。ラフィンは絶対に言ってくれない台詞ね。日本で国際的な学会が開かれて好都合だったわ。わたしも兄さんと一緒に堂々と入国できたもの」
「もしかしてベイン博士も?」
「残念ながら博士は無理だったわ。けれどわたしにリードマンの奴らの目が向いているうちに、別ルートで仲間たちとドイツに向けて出国できた。わたしもこのあと博士を追うわ」
稜弥は先ほど島田に渡したものと同じパケットをセシルに手渡す。
「申し訳ないけれど、リードマンの奴にも同じものを渡してしまった」
「わかってる。ごめんなさい、あなたの家族の行方が早く掴めたらいいのだけれど」
「仕方がないよ。それに俺の家族は東京に連れてこられるようだ。近くなればそれだけ見つける機会に恵まれる。俺こそごめん。君たちの足を引っ張っている」
セシルはかぶりを振りながら、胸元から取り出した銀色のケースを稜弥に手渡した。
「あまり無茶はしないでね、タカヤ。それから常用は効きが悪くなってくるから、おすすめはできないわよ」
「ありがとう、セシル。君のラットブロッカーは効果抜群で、俺は天国の入口を垣間見たよ」
ポーンと電子音が鳴って扉が開いた。セシルは赤い唇を引き上げて、
「それでもこうして歩けるんだからさすがよ。並のアルファなら気を失っているわ。わたし、強い男は大好きよ」
「俺も君のような、賢くて美しい女性アルファにはお目にかかったことがないよ」
セクシーな看護師は満足気なウインクを残して、エレベーターから出て行った。
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