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第五章(5)
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特別病棟の廊下に一歩足を踏み入れた途端、稜弥は冷えた空気に漂う微かな香りに鼻を鳴らした。これくらいのフェロモン含有量ならば欲情する心配はない。小さなエントランスを進むと屈強なガードマンが立つ扉がある。稜弥はもらったIDカードをスキャナーにかざし、虹彩認証をクリアして、ガードマンにまじまじと顔を確認されると、やっと扉を開けてもらえた。
扉の向こうは病院とは名ばかりの豪奢な作りの空間になっている。有名絵画が壁を飾り、柔らかな間接照明が照らす廊下は高級ホテルと勘違いしそうだ。実際、ここは国内外での名のあるデザイナーに手がけてもらったと、宣親は事も無げに言っていた。
奥へと進むうちに空気中のフェロモンが濃度を増していくのがわかった。それは明らかに多くのオスを誘い込む透明な道筋。この先の特別室のドアを開けば、その匂いの主がいる。本能は彼を求めてはいるが、稜弥はそれ以上進むことをやめた。これだけフェロモンが充満しているのだ。この先で繰り広げられている情景を思うだけで、胃のむかつきがぶり返してくる。稜弥は手前にある面会室へと入り込むと、部屋の扉をきっちりと閉めた。
微かな振動音は彩都の喘ぎにかき消されている。顎をあげ、閉じた瞼からは涙をこぼし、宣親が与える偽りの快楽を、彩都は枕をきつく握り締めて受け入れていた。
「はあっ、あっ、ああっ、……宣親ぁっ」
宣親の名を呼ぶ彩都は、すでに正気を保っていない。目いっぱいに両足を拡げ、宣親が差し込むバイブをさらに奥へと挿入しようと、彩都の後蕾の入口は柔らかく蠢いていた。
「まえ……、まえ、さわってぇ……、あっ、ひぁっ」
呂律の回らない彩都の要望を宣親は黙ったままで叶える。何度も達して、白濁でぬらぬらと光る彩都の花茎を、同じように濡れた手で握りこんで上下に動かした。
「あんっ、あ、うああっ! あ、あっ、あああッ!!」
爪先をぎゅっと丸めて、彩都の鈴口からとぷりと白い蜜が吐き出された。でもそれはもう、色も薄く、量も少ない。
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