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第五章(11)
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年も明けた一月のある日、稜弥は彩都に頼まれて東條大学の第二キャンパス内にある図書館へとやってきていた。彩都たちが所属する農学部のある第三キャンパスとは違い、第二キャンパスは海沿いに面した街なかにあり、文学部と教育学部が中心となっている。そのなかでも東條大学附属図書館は、その蔵書数の多様さから学生や大学職員のみならず、他大学や一般企業、果ては各中央官庁に属する人々が利用する国会図書館にも劣らない施設だ。
稜弥は彩都の軽自動車で図書館の駐車場に乗りつけると、図書館の職員に台車を借りて車のトランクから大量の本を台車へと移す。要は彩都が長年、借りっぱなしで放置していた図鑑や学術書を、いい加減に返却してくれと言われて持ってきたのだ。
(しかし、七瀬先生の片付けられない病もここまでくると、呆れるのを通り越して可愛く思えるのはなんでだろう)
稜弥は本を積んだ台車を押して歩きながら思い出し笑いをする。
「ええっ、これも図書館の本だったっけ?」
メールで届いた貸出リストを見ながら、稜弥が整然と並べた本棚の本を彩都が背伸びをして取り出そうとしている。到底、彩都の背丈では届かないのはわかっているのに、爪先立ちでぷるぷる震えながら意地になって腕を伸ばす姿に稜弥はハラハラしながら、
「先生、そこは俺が抜き取りますから、じっとしていてください」
「これくらい僕でも……っ、うわっ!」
――ドサドサドサッ!
予想を裏切らない展開に、稜弥は笑いを堪えて彩都を救出に向かう。本の中から掘り出した彩都を抱えるようにして近くの椅子へと座らせると、怪我が無いか丁寧に確認した。そんな時、彩都はいつも息を詰め、顔を真っ赤にして困ったように稜弥を見つめる。稜弥が視線に気づいて顔をあげると、慌てて彩都はあっちの方向を見るということを繰り返した。
(やっぱり必要以上に七瀬先生に構い過ぎてるか)
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