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第六章(3)

『ラフィン、今から伝える番号の位置情報を教えてくれ』  軽くタップして命じたことに、OK、とラフィンは応じる。差して時間がかからずにある地図が表示された。その真ん中に立つピンが花菜の居場所を示しているのだろうが、稜弥はその場所に違和感を覚えた。 「どうした? 居場所がわかったのか」 「……ああ、だけど坂本さんはこんなところに立ち寄るのか?」  稜弥は地図を拡大した。みんなが集まって稜弥の手元を覗き込む。ラフィンの検索はさすがだ。花菜のスマートフォンが、そのビルのどの部屋にあるのかまでを探り当てていた。 「ここは繁華街の裏手だな。エムズクラブという店にあるらしい」  その店名を聞いて、亜美が「ウソッ!」小さく悲鳴をあげた。 「そこは斉藤たちのサークルが根城にしているクラブよっ! そこに女の子を連れ込んで、お酒を飲ませて、それから……」  亜美の言葉が終わる前に孝治が走り出す。その腕を咄嗟に掴んだのは意外にも彩都だった。それまで黙って成り行きを見極めていた彩都が口を開く。 「吉田さんと川根さんは宣親に連絡してここで待っていて。柳くん、僕と神代くんとその店に行こう」  孝治と共に部屋を出ようとした彩都を稜弥が止めた。 「七瀬先生もここにいてください」 「でもッ」  稜弥が彩都に顔を近づけて三人に聞こえないように囁く。 「その店にはアルファがいる可能性があります。俺と柳とで彼女を探しますから、念のため先生は川根さんたちを連れて、東條先生のいる附属病院へ向かってください」  初めて見る稜弥の厳しい表情に彩都は胸騒ぎが収まらない。先に廊下を走っていく柳の背中を追いながら、稜弥は銀色のピルケースから取り出したカプセルを口に放り込んだ。

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