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第六章(17)

 そうだった。彩都は今だに島田が稜弥と親戚だとの嘘を信じている。「そうですね」と返事をして食べ終わった皿とマグカップを引き上げようとした稜弥を、彩都はなぜかキラキラとした目で見ている。 「なんでしょう?」 「その……、三時から来客だからさ、おやつで食べる予定だったチョコミントアイスを先に食べてもいいかな?」  窺うように見上げているだけなのだろうが、その上目使いの瞳のなかに甘えた雰囲気があることなど彩都は気づいていないだろう。  稜弥は、んん、と咳払いをして「仕方がありませんね、今回だけですよ」と言うと、うれしそうに顔を輝かせた彩都が冷蔵庫へ向かう背中を優しく見送った。

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