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第八章(8)※

 頬を上気させて、覚束無い手つきでボタンを外していく彩都から、稜弥は目を逸らせない。彩都はボタンをすべて外し終わると、衿元をそっと開いた。はだけたシャツの間からあらわれた白い素肌から、稜弥を誘う甘い香りがいっそう強く漂う。稜弥の喉がごくりとなった音が聴こえて、彩都の下腹部も疼く。  桜に照らされて仄かに浮かび上がる彩都の元へ、稜弥はまっすぐに歩いていく。彩都の前に膝をついた稜弥は、なにかを微かに呟いてゆっくりと右手をあげた。伸ばされた手は今度は迷うことなく、彩都の腕を掴んだ。 「ん、……ふぅ、……は、んんっ……」  上顎をなぞっていた稜弥の舌がまた、彩都の舌を絡め取ると強く吸いあげる。彩都も稜弥の激しいキスに、酸欠になりながらも懸命に応えた。  彩都を桜の木に押さえつけた稜弥は、彩都が着ていたシャツを剥ぎ取り、性急にベルトも外してズボンも足元に滑り落とした。花の下に現れた彩都の胸に手を這わせ、ツンと存在を主張する小さな尖りを指先で摘んだ。 「あっ! ふ、うぅ……」  彩都が声を噛み殺している。稜弥は彩都の耳朶を食んでいた唇を首すじから鎖骨へと移動させ、左肩の桜斑のひとつをきつく吸った。 「んあっ!」  なぜ、そんなところが感じるのだろう。でも、自分の胸に散った桜の花びらによく似た痕を、稜弥が口づけるたびにそれらは鮮やかに色を増し、彩都の素肌を美しく飾った。  稜弥が桜斑ではない薄桃色の胸の尖りを唇で挟む。左の乳首に歯を立てられ、キリッと感じた痛みのあとにねっとりと舐められると、それだけで彩都の後蕾からは蜜が溢れ出して下着がぐっしょりと濡れていく。尻に張りつく薄布に触れた稜弥が小さく笑った気がした。そして最後に残ったその布まで下ろされて、彩都は身にまとうものが無くなってしまった。 「ああ……」

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