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第八章(10)※

 稜弥が彩都の細い腰に手を添える。それだけでぞくぞくとした期待が背筋から尾てい骨へと走り抜けた。今か今かと稜弥の屹立を待ちわびて、自分の蕾の入口がぱくぱくと開閉しているのがわかる。やがて小さな後孔に稜弥自身が充てがわれた。それは少し押しつけられただけなのに、硬く張り詰め、想像以上の質量を保っているのが感じられた。稜弥は何も言わず、ひとつ短い息をついたあと、一気に彩都の中へと侵入してきた。 「あっ、はああ……! んんっ!」  襞を割り、熱い滾りが彩都の内壁を蹂躙する。これ以上はないほどに拡げられた秘蕾の襞は、それでも健気に稜弥を喰いしめて、奥へ奥へと蠕動して熱塊を導いた。その彩都の体内の動きに反するように、稜弥は一旦腰を引いて飲み込まれた屹立を抜くと、また勢いをつけて彩都に打ち込んだ。 「あ……やぁ……、ぁ! ううっ、んぁっ! あっ!」  淫猥な抽挿の音が二人の結合部から響き渡る。獣のような息づかいで稜弥は彩都を穿った。激しく揺さぶられる彩都の嬌声も途切れとぎれに奏でられる。甘く深い香りのなかで、繰り返される最奥への責めと背中の桜斑を強く吸われて、彩都はだらしなく口を開け、視点の合わない目で顎をあげて桜を見た。目の前一面の花の色が真っ白に変わっていく。痺れる頭の片隅で、彩都は稜弥の異変に気がついた。  自分を穿つ稜弥の形が変わっていく。首すじにかかる荒い吐息から一層、アルファの匂いがきつく漂っている。  はああ、と稜弥の熱い吐息がうなじにかかった瞬間、彩都の中の理性が警報を鳴らした。そしてある言葉が痺れる脳裏に浮かぶ。それは以前、彩都をオメガだと診断した医師の台詞。その台詞の中の二文字が急に頭をいっぱいにした。  ――妊娠。  アルファとの性交中、うなじを噛まれて番となると受精率が格段に高くなる。それは女性も男性もオメガである以上変わらない――。  冷水に突き落とされたように彩都の心は恐怖に震えた。なのにそんな心を嘲笑うように、自分の秘蕾はきつく稜弥の熱塊を喰い締めて、アルファを受け入れた喜びに体中が打ち震えている。

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