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第八章(11)※

(いやだ、それだけはいやだ。僕は誰の子も……、孕みたくない!) 「ああ……、ん、いや、いやぁ……」  稜弥の律動が激しくなった。目の前の桜の幹をしっかりと掴んでいるのに、後ろから突かれる衝撃で体が飛びそうになる。彩都の中の屹立は一段と太さを増し、稜弥の射精が近いことが擦られる粘膜から感じられた。 「彩都……っ」  稜弥が彩都の名を囁く。そして左手で彩都の後頭部を押さえ、白いうなじを剥き出しにすると、つう、と舌を這わせた。  ――ぞくん。  舐められた跡が熱を発する。もう体は正直に稜弥に与えられる契約の印を待っていた。抽挿の間隔が狭まり、稜弥の歯が薄い皮膚に届こうかとしたその時、 「……お願い、……噛まない、で……」  それは本当にささやかな彩都の抵抗の言葉。稜弥に押さえつけられて足の間から止めどなく秘蜜を滴らし、うなだれたうなじは花明かりを受けて薄く上気しているのに、彩都ははっきりと番うことを拒否した。  稜弥の与える快感に溺れながらも、その嬌声のなかに「噛まないで」と繰り返す。でも、背後の稜弥の動きは変わらない。蕾の奥の快感を生み出す部分を執拗に責められ、存在を主張し始めた子宮の入口をつつかれると、かろうじて残っていた彩都の理性は消滅してしまった。 「ああっ! ひあっ! あああっ!」  開いた足の間で揺れていた彩都の花茎から白濁が迸る。それは大きな桜の樹皮を濡らし、ゆっくりと伝い落ちた。その桜の幹に頭を寄せると、なぜか奥から鼓動のような音が耳を掠めた。  彩都が達したのを確かめて稜弥は口を大きく開けた。その気配を察した彩都の脳裏にはもう、強い牡に服従する陶酔しかなかった。 (だめだ……。ぼくは、もう……)  閉じた瞼の向こうに宣親の姿が浮かぶ。涙で滲む宣親に、ごめん、と彩都は小さく謝った。そして――。

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