143 / 181

第八章(13)※

 それらの匂いが鼻腔に入ってきた途端、彩都の後蕾から、くぷ、と稜弥の名残りが流れ出てくる。柔らかかった花茎に血液が集まり、横になっているのに目眩がする。頭は劣情で一杯になり、彩都は汚れたシーツに鼻を押しつけて稜弥の匂いを嗅ぎなから、とろとろと蕩ける蕾に自らの指を突き立てて粘膜を激しく擦り始めた。 「あ、あんっ。う……はあ、そこっ、……んんっ、やぁ……」  誰もいない部屋に彩都の嬌声が響く。後ろだけでは満足できなくて前も触ろうとしたとき、彩都はいつの間にか部屋に入ってきた稜弥に見下ろされていることに気がついた。サッと彩都の肌に紅が差す。 「あ……、み、ないで……。お願い……」 恥ずかしさに体を丸めようとする彩都に稜弥は飛びかかり、両手を拡げてシーツに押しつけると、彩都の鈴口から溢れる透明な蜜を舌先ですくい、躊躇なく花茎を口に含んで、また、彩都のなけなしの思考を奪っていった。 「ひあっ、……ううっ、はあっ……、あ……」  ぐぷっ、と稜弥の太い幹が容赦なく挿入ってくる。でも彩都の蕾の奥はすでに稜弥の形を覚えていて、少しの抵抗をしただけで粘膜は稜弥の熱塊を柔らかく締めつけた。  パンパンと互いの肌がぶつかり、彩都が白い喉を反らす。可憐な花を犯す自分自身を見つめる稜弥の瞳には、オメガを従えた満足感とは別の感情が潜んでいた。 「は、ああぁ。……また、くる……」  もう自分の腰を動かさなくても、彩都の尻がゆらゆらと前後に揺れて、稜弥を艶かしく飲み込んでいる。稜弥はその双丘から腰のくびれ、反らされた背筋に左の背中を彩る桜の花びらへと視線を移し、頭を垂れた彩都の綺麗なうなじに目を止めた。  途端に激しい衝動が自分の中心から湧き上がる。瞬間、彩都の肩を強くシーツに押しつけ動きを封じた。彩都はいとも簡単に稜弥に捕らえられ、突かれる快感に喘ぎながらも、その体は噛まれる恐怖に細かく震えている。それを認めると、稜弥の押し込めた感情が小さく自分を諌めて……。

ともだちにシェアしよう!