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第九章(17)
男達のひとりがベルトを外してイチモツを擦りながらフラフラと彩都に近づく。徳重の制止が聞こえないのか、男は唸り声をあげて彩都に飛びかかろうとして「やめんかっ!」と徳重に殴り飛ばされた。徳重は大声で男達に命令をしているが、他の誰も徳重の言うことなど聞かず、苦しそうに粗い息を紡ぎ、なかには押さえた股間から失禁する者もいた。
「キサマら、どうしたんだ。私の言うことを聞けっ!」
低い笑い声がした。その主は足を踏ん張り、壁に背中をつけて立っている島田だった。
「徳重さん。この部屋にいて、よく平気だな。……やはり、あんたはアルファじゃなかったのか」
「な、なにを言う! 私は紛れもないアルファだ!」
「いや、あんたはアルファじゃない。こんなにオメガフェロモンが充満するなか、正気でいられるアルファなんていない……。くそっ、俺も稜弥から奪った抑止剤を飲んだのにこのざまだ。七瀬彩都のフェロモンは他のオメガとは桁違いだ。この匂いさえわからないあんたは、ベータとしても並み以下だ。あんたがアルファだというのならオメガを抱けるだろ? 言っとくがあんたがベータなら、俺は金輪際、あんたの命令は聞かないよ」
「うるさい、黙れ!」
激昂した徳重は上着を脱ぐと、床に転がっていた発情促進剤のアンプルの中の薬剤を飲み干した。そして、熱い吐息をつく彩都の元へと大股で近づいて手首を掴むと、島田に振り返った。
「私がこの薄汚いオメガを従えるところをそこでよく見ていろ!」
徳重が彩都にのし掛る。「いやっ、やあ」とわずかな抵抗を見せた彩都の頬を、徳重は容赦なく平手で殴った。徳重の蛮行を目にした島田が急に怒りをあらわにした。
「くそっ! いい加減にしろよベータ野郎、俺の獲物を好き勝手するな!」
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