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第十章(6)※

 彩都の鳶色の瞳からぽろぽろと透明な雫がこぼれ落ちる。稜弥はその温かな涙を口づけで吸い取ると、「……今すぐ彩都と番いたい」と、耳元で囁いた。彩都は両手を広げ、火照る体を稜弥に預ける。彼の広い背中に廻した両手をしっかりと這わせ、稜弥の首すじに鼻を押しつけて深く息を吸い込むと、官能を乗せた吐息でその言葉を紡いだ。 「――稜弥、僕を君の番にして」  ギシギシとベッドが軋む音をかき消すように、彩都の歓喜の声が空間に響いた。薄く開いた瞼の先の稜弥は、眉間に皺を寄せて顎から汗を滴らせ、懸命に彩都を穿っている。その精悍な顔が上気しているさまに、彩都はなぜか嬉しくて泣きそうになった。 「んっ……、はあっ、あっ、ああ……っ!」  何度目かもわからなくなった花茎からの迸りが二人の肌を濡らす。達しても達しても、彩都の中の稜弥を求める熱は燻り続けて治まることがない。この焦燥がなぜなのか、今の彩都にはよくわかっていた。 「んあっ、はあ……、たかやぁ……」  舌足らずな甘い声で自分の名を呼ぶ彩都の唇に噛みつくようなキスをして、稜弥は繋がったまま彩都の体をうつ伏せにした。 (ああ、やっと……)  期待に潤んだ彩都の秘蕾がさらに奥へと稜弥の屹立を誘う。稜弥の牡はますます硬さを増し、抽挿を繰り返すたびに彩都の中の愛液が掻き出されて溢れた。 「彩都、彩都……!」  膝をつく太ももが稜弥の動きに耐えられない。それでも彩都は背中を反り、高く腰をあげて稜弥を深く迎え入れた。稜弥の熱塊はその形を変えて、彼の限界が近いことが擦られる粘膜から伝わった。 「ああっ!……、あんっ、は……、あ、またっ……イくっ、イっちゃうぅ……!」  稜弥の抽挿が一層激しさを増す。後ろから、左の背中に咲きほこる桜斑のひとつひとつを強く吸われ、彩都は生まれる熱に顎をあげた。その稜弥の唇の軌跡が、彩都の肩から首すじへと近づいてくる。稜弥が短く吐き出す熱い息がかかるたびに、彩都の心臓は期待と不安で激しく鼓動した。

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