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第2章 異世界でももふもふは正義!?
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異世界と言えば?
やっぱりファンタジーな可愛いもふもふモンスターとのふれあいだよなー!
もふもふはどこの世界だって正義!
もちろん本物のもふもふもいいけど、ケモ耳や尻尾が生えてる美少女とかマジで最高すぎて妄想が止まらない。
動物的無垢な心を持ちながら妖艶な体でべったり懐いてくる設定とか正直たまらない。もうこっちが獣になりますけど? みたいな。
……そんな風にもふもふに夢を持っていた。
確かに異世界にはもふもふなモンスターはたくさんいた。
しかし、現実、いや異世界のもふもふはそんな甘いものじゃなかった。
「グルルルルル……ッ」
大型犬よりも一回り大きく、顔は虎のようなネコ科の猛獣に似たモンスターが、俺の数メートル離れたところで上体を低くして唸っていた。
その目は俺をしっかりと睨み据えていて、少しでも変な動きを見せれば飛び掛かってくることが容易に想像できた。
緊迫した空気に、恨めしいくらいに平穏な川のせせらぎが背後を静かに流れている。
モンスターが慎重な足取りで一歩前に踏み出した。
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
どうしてこんなことになったのか。
つい数十分前まではこんなことになるとは予想だにしていなかった。
どうして……と考えて事の発端があの勇者という名の、クズでスケベな守銭奴にあることを思い出して、俺は頭を掻き毟りたくなった。
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