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魔王を倒した後、俺達はとりあえず事の経緯を王様に報告するために王都へ向かっていた。
俺は一刻も早く、俺のケツを隙あらば狙っている男が二人もいるパーティーから抜け出して元の世界に帰りたいのだが、見知らぬ土地で一人になるなど自殺行為だ。
それにチェルノが言うには、王都の国立図書館に元の世界に戻る方法について文献があるかもしれないとのことだったので、俺は渋々このパーティーに荷物持ちとして居留まっていた。
しかし嫌なのはケツを狙われるからだけではない。
森の中を進んでいた俺達だったが、日没が近付いたため、適当な場所で一夜を過ごす準備をしていた。
「あ、水が少なくなってきてるな。おい、水を汲んでこい」
荷物を漁っていたアーロンが言った。
それが誰に向けて言っているのかは、悲しいかな、こちらに少しも視線を向けられていないのに分かった。
しかしその亭主関白然とした飲んだくれの夫が妻をこき使うような、えらそうな言い方にはカチンときた。
「は? なにえらそうに言ってんだ。なんで俺が行かないといけねぇんだよ」
こいつは荷物持ちを奴隷か何かと勘違いしているようで、面倒くさいことはすぐに俺にさせようとする。
毎度のこととはいえ、人権を無視したその態度には心底腹が立つ。
「荷物持ちの分際で口答えするな。さっさと行け」
俺の反抗に、苛立つと言うより面倒くさそうに答えた。その余裕がまた腹立たしい。
「いやいや! 荷物持ちの分際ってなんだよ! 誰のおかげであのクソ重い荷物持たなくてすんでると思ってるんだ!」
憤然と言い返し、ずんずんと足音を踏みならしながら奴の背後に立った。
「というか、普通こういうのは気付いた奴が行くのが常識だろ」
ビシッ、と奴の背中に向けて指をさす。
シャンプーの補充然り、トイレットペーパーの交換然り、気付いた奴が補充、交換するのが常識だろう。
しかし、奴に俺の世界の、いや全世界の常識というものは通用しなかった。
「悪いな、生まれがよくないもんで、そんな常識は習ってない。俺の世界の常識では――」
まるで言葉を切るように、鋭い切っ先が俺の鼻先に向けられた。
皮膚に触れる一歩手前で刃の冷たさが鼻先にかすめた。
俺はごくりと息を呑んだ。
「強者の言うことは絶対。命が欲しければ弱者は強者に従うべし、だ」
にやり、と強者の笑みでもってアーロンが不敵に言い放った。悔しいが鋭い切っ先を前に俺は言葉を返すことができなかった。
しかし、奴の横暴な言動に我慢できない者が俺の他にもいたようだ。
瞬きの瞬間に消えるほどの速さの弓矢が俺とアーロンの間を裂き、向こうに生い茂る木々の幹に重く突き刺さった。
弓が飛んできた方を見ると、鬼の形相で弓を構えるドゥーガルドがいた。
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