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森を抜けると大きな壁に囲まれた都市に辿り着いた。
王都まであと少しだが、食料なども少なくなっているのでここで補充するため一泊滞在しようと都市の門で手続きをしていたのだが……――。
「だから、クロはいい子なんで大丈夫ですって!」
「いや、そう言われてもなぁ……」
厳つい門番が困ったようにクロと俺の顔を交互に見た。
「こんな大きな獣を街に入れてもし暴れでもしたら大変だからなぁ」
「いや、だからクロはそんなことしませんから!」
失礼な事を言う門番に俺は憤慨した。
さっきからこのやり取りが延々と続いている。確かにクロは見た目は大きいし、口を開ければ鋭い牙も見えるので、街を守る門番として慎重になるのも分からなくはない。
でもクロは賢く、気性も穏やかで人を襲う事なんてない。……いや、アーロンとドゥーガルドには結構刃向かってるか。
とにかく、俺に危害を加えない限り、クロは大人しくていい子なのだ。門番が危惧する事態など絶対に起こらないと断言できる。少なくとも人間のアーロンやドゥーガルドよりも遙かに聞き分けがよく、無害な存在であることは俺が保証する。
しかし門番はやや鬱陶しそうな顔で溜め息を吐くばかりで、一向に首を縦に振る気配がない。
「もういいんじゃねぇの? その辺に放しておけば」
面倒そうに欠伸をしながら適当なことを言うアーロンをキッと睨み付ける。
「一人だけここに置いていくなんてかわいそうだろ!」
「いや、野良だったんだから一人でいるのにも慣れてるだろ」
「野良だったからこそ寂しいに決まってんじゃん。なぁ、クロ?」
「クゥン……」
お座りをした状態で目を潤ませて悲しそうな声で鳴くクロに、俺の中の庇護欲が完全にノックアウトされた。
「クロ……! お前をひとりになんてさせないからな! いざとなったら俺と一緒に外で野宿しよう!」
ぎゅっとクロに抱き付きついた俺の言葉に、アーロンが「はぁ?」と不機嫌な声を上げた。
そして俺の襟首を掴むと無理やりクロから引き剥がした。
「なにすんだよ!」
「うるせえっ。お前は俺と今晩宿に泊まってエロいことするんだよ! なに勝手なことぬかしてんだ!」
「お前が何勝手なことぬかしてんだぁぁぁ!」
若干、門番達が引いてるじゃねぇか!
「……本当に勝手なことを言う男だ。ソウシと宿で睦み合うのはこの俺だ」
ドン! と胸を張って堂々と言い放つドゥーガルドの妄言に、門番達がついには「三角関係……」「みんな男じゃねぇか……」と小声でざわつき始めた。
「ドゥーガルド、頼むから黙っててくれ!」
このままではクロだけじゃなく俺達まで入れなくなるかもしれないと思うくらいに、門番達の目はますます怪訝に曇っていた。
すると、
「門番さ~ん。じゃあ聞くけど、どうしたらクロちゃんもここに入れるのぉ?」
チェルノが助け船を出すようにして、門番に訊ねてくれた。
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