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「そうだな、このまま黙ってやられてばかりじゃいてられねぇ!」 「人間を滅ぼすくらいの勢いでやってやろうぜ!」 「私たちで人間に罰を与えましょう!」 「……あ、あのさ」  仲間達の気持ちがひとつになりつつあったその時、ノエが控えめに口を挟んだ。 「そ、それって、もちろん、仲間を殺した悪い奴らだけを襲うんだよね?」  恐る恐る確認するノエに、クラトスが「はぁ?」と顔を顰めた。 「そんなわけねぇだろっ。あいつらだって俺達を無差別に殺してるんだ。いい奴と悪い奴を分けながら殺すなんてそんなまどろっこしいことできるか!」 「で、でも、人間は悪い奴らばかりじゃないよ……?」  強い口調に怯みつつも食い下がるノエに、クラトスはチッと舌打ちをした。 「これだから人間に飼われていた奴はっ。すぐに人間の味方をしやがる」  クラトスの苛立ちを含んだ嫌みにノエは黙り込んだ。  彼は幼い頃に群れからはぐれたところを小さな村に住む老婆に拾われ育てられた。そのため人間に対して私たちより好意的であった。  もちろん私たちはノエのそういう純粋なところを好いていたし、親のようにあたたかい気持ちで見守っていた。  しかし彼の心優しい言い分は、良心を捨て復讐の鬼へと変わらなくてはならない私たちには、毒以外の何ものでもなかった。  私は悲しげに俯くノエの肩に優しく手を置き正面から向き合った。 「ノエ、お前の気持ちも分かる。私だってできることなら罪のない者を傷付けたくはない」  それは半分本心で、半分嘘だった。  確かに罪のない者を傷付ける事に罪悪感がないわけではない。だが、罪があろうとなかろうと人間の全てが憎い、とも思っていた。  いい人間、悪い人間、とわけて考えることが面倒になるほど、仲間を目の前で殺され続け私の心は疲れ切っていた。  きっと仲間も誰もがそうだった。ノエを除いては……。 「でも人間たちはどうだ? 私たちの仲間にひとりでもあんな無残に殺されていい奴はいたか? 罪はあったか?」  いや、なかった。皆、誰も優しくいい奴ばかりだった。人間の欲望のためだけに殺されていい奴など一人もいなかった。  気付けば、私の手はノエの肩を掴んで震えていた。 「このまま仲間が無意味に殺されていくのはもうたくさんだ……っ。いつか殺されるのを待つくらいなら、少しでも多くの人間に私たちの苦しみを分からせてやりたい……っ」  心の底から湧き上がる言葉は涙で滲んでいた。そんな私の言葉にノエは何も言い返さず黙って頷いた。  こうして私たちは盗賊団に扮し、仲間の仇を討つことを決めた。  今思えば、私は長失格だったのかもしれない。  賢い長であれば、感情的なこの判断が更なる悲劇を招くことなど容易に想像できただろうに……。

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