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言葉にすればするほど惨めさが増して、嗚咽が言葉の端々に漏れ出る。
それでもクロは少しの憐れみも見せず、にっこりと微笑んだままで、俺の言葉に「うんうん」と頷いて相槌を打つ。
「そうだな、男なのにこんなに小さい上に、女のように潮を吹いて後ろで気持ち良くなってしまうなんて、私だったら耐えられないな」
とどめを刺すようなひどい言い様に、俺は目を見開いて固まった。
驚きのあまり最初は理解できなかったが、言葉の意味が徐々に心に突き刺さってきて俺は悔しさと情けなさで泣きじゃくってしまった。
しかし、クロは全く狼狽えることなく、むしろ笑みを深めて俺の腕を引いた。もともと、気持ちよさに震えて脚が震えていたのだ。容易にバランスを崩し、腕を引かれるがままクロの胸元に倒れ込む。
「すまない、すまない。別にソウシを悲しませたいわけではないんだ」
ぽんぽん、と背中を優しく撫でられると、相手はこんなひどいことになった元凶のはずなのに、不思議と心が落ち着いた。
「ソウシは悪くない。こんなにも感じやすい体なのはとてもいいことだ」
「っ、ふぁ……ン」
耳元で甘く囁きながら、指先で窄まりの縁を緩く撫でられる。それだけで頭がじんじんと淡く痺れる。
「ソウシも気持ちいいのが好きなんだろう?」
訊かれて、甘い吐息を漏らしながら頷く。
「じゃあいいじゃないか。何も問題ない」
「でっ、でも……ッん、お、おれ、男なのに……ふ、ぁあ……っ」
「そうだな、男だったらここでこんなに感じて気持ちよくなってしまうのは恥ずかしいな」
言っていることはひどいが、無骨な中指でごりごりとナカを掻き混ぜる手つきは優しい。
そのせいで、こんなにも屈辱的なことを言われながらクロの言葉に全く怒りが湧かなかった。
「でもこんなに感じやすいことはとてもいいことだ。むしろ誇るべきことだ。それなのに恥ずかしいと思うのはソウシが男だからだ。……じゃあ男をやめればいい」
「……ッ!」
暗く甘い声でそう囁かれ、腰の辺りからゾッと寒気が駆け抜けた。
「女だったらナカでいっぱい気持ちよくなることも全然恥ずかしくない。何も気にすることなく思う存分気持ちよくなっていい」
お腹の空いた子どもの前でお菓子をちらつかせるようにしてクロが囁く。
めちゃくちゃな暴論なのに〝思う存分気持ちよくなっていい〟という言葉は今の俺には目眩がするほど魅力的な言葉だった。
それでも欠片ほど残ったわずかな理性が、甘い言葉に流されないよう何とか踏みとどまらせた。
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