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三人が共倒れしてくれることを祈りながら、闘いの行く末を見守っていると、森の奥にぼんやりとした灯りが見えた。
俺はちらりと無駄な争いを繰り広げる三人がこちらの動きに気付いてないことを確認してから灯りの方へ向かった。
近付くと、焚き火の前で膝を抱えて座るチェルノと、鎖でギチギチに縛られ伸びているジェラルドの姿があった。
鎖ってあんな亀甲縛りみたいなことできるんだ……。
一部とんでもない光景が目に入ったが、どうやら元の場所に戻ることができたようでホッと胸を撫で下ろした。
「あ、ソウシおかえり~、どこに行ってたの~?」
俺に気付いたチェルノが軽く手を振る。
「あー……、まぁちょっと散歩に……」
言葉を濁しながらチェルノの横に腰を下ろした。
「クロちゃんたちは~?」
「えっと……、向こうで遊んでる」
嘘ではない。遊びと同じくらい、いやそれ以上に無駄なことをしていることは確かだ。
「そうなんだ~、夜中に元気だね~」
「チェルノこそ夜に起きるなんて珍しいな」
「うん、ちょっとね~。寝苦しくて目を醒ましたら目の前にすっごい胸糞悪いものがあって目覚めが悪かったからホットミルクを作ってるの~」
なるほど、だからジェラルドがあんなことに……。
細かいことは分からないがチェルノの言葉と殺気に満ちた目でおおよそのことは想像できた。
あんまり深く関わらんとこ……、と火にかかった小鍋の中でコトコトと煮立っている牛乳の方へ視線を遣る。
「うわぁ、うまそう」
「ソウシもいる~?」
「うん、いるっ」
「あとついでだから、豚の丸焼きでもつくろうかなぁと思ってるんだけどソウシもいる~?」
「あ、ありがたいけど、それはいらないかなぁ……ははっ……」
豚がどこに……? などという野暮な質問はせず丁重にお断りした。
その後、チェルノに事情を説明して服従の首輪を処分してもらい、魔法で体を清めてもらった。
そしてホットミルクを飲んでホッと一息吐いた。
「ボクまだこれからクソ豚野郎の丸焼きするから、その間見張っててあげるよ~。だからゆっくりおやすみ~」
「そっか、じゃあそうさせてもらおうかな」
チェルノの厚意に甘えて俺はテントに戻った。前半の不穏な単語はもちろんスルーだ。
少し前にクロとテントに入った時は、一人と一匹でぎゅうぎゅうだったのに、今では寝返りが打てるくらい広く、少しだけ寂しくなった。
俺を包み込んでくれていたもふもふを懐かしみながら俺はうとうとと眠りについた。
翌朝、三人が帰って来ないので様子を見に行くと、アーロンとドゥーガルド、そして狼の姿に戻ったクロが、ボロボロの状態で地面に倒れていた。
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