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第28話 これが噂のモテ期ですか!?
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「本当にさぁ、僕のトラウマを刺激するのもいい加減にしてよね~。本当に殺すよ~?」
翌日、俺たちの先頭を切るチェルノが振り返りながら言った。
「あははは~」と不気味な笑みを浮かべたままなのがまたこわい。
「知るか! お前の気色悪いトラウマなんか! ……つーか、なんで俺が荷物持ちしないといけないんだよ!」
最後尾で大きな荷物を背負うアーロンが叫んだ。
「仕方ないでしょ~。ソウシは昨日アーロンが媚薬飲ませたせいでまだ腰が立たないんだから~。自分がやったことなんだから自分で責任とりなよ~」
「俺の辞書に責任なんて言葉はない!」
「あはは~、さすが最低~」
「うるせぇ! つーか、なんで俺が荷物でドゥーガルドがあいつを背負ってるんだよ! 責任云々とかいうなら普通逆だろう!」
アーロンは俺をおぶったドゥーガルドを指さしながら異議を唱えた。
「……お前にはソウシに指一本触れさせない」
ドゥーガルドが振り返りジロリと睨みつける。
「お前なにナイトぶってるんだ! 言っとくけど世界中の男のナニを切り落とそうとしたお前の方がよっぽど危ねぇ奴だから! お前もさっさと離れろ!」
「……死んでも離さない」
ぎゅっと俺を背負う腕に力が入る。
……正直、死んだら離して欲しい。
というか身の危険が迫った時はいち早く避難させてくれ。
ハァ、とため息をつくとドゥーガルドが振り返った。
「……大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃねぇ……」
媚薬の効果も薄れ昨日みたいな性欲はないが、まだ体がだるい。
特にケツが痛くて歩くどころか立つこともままならない体だ。
大丈夫というにはほど遠い状態だった。
「……そうか。俺にできることがあれば何でも言ってくれ」
「ドゥーガルド……」
優しい言葉にほろりとくる。
責任逃れをするどこかの誰かとは大違いだ。
「……体が元気になったら昨日の続きをしよう」
「……え?」
ドゥーガルドの優しさに感動していたのもつかの間、続いて出てきた言葉に目を見開いた。
じっとこちらを見る目は甘い微熱を帯びている。
嫌な予感がする。
「……昨日は邪魔が入ってしまってソウシのお願いをきけなかった。……今度こそちゃんとソウシを抱」
「ちょ、ちょっと待った!」
俺は慌ててドゥーガルドの言葉を遮った。
「……どうした? もしかして元気になるまで待てないのか? でも激しい動きを伴うものだ。万全な状態でないと」
「いやいやいや! なぜそう解釈した!?」
ドゥーガルドの思考回路が分からない!
「昨日のは、完全に媚薬のせいだから! 俺はドゥーガルドに抱かれたいとか全然、微塵も思ってないから!」
そうだ。昨日は媚薬を飲んであんな状態になったのだ。
思い返すだけで死にたくなるあの痴態は媚薬のせいで、俺自身には全くそんな願望はない。断じてだ。
突然、ドゥーガルドが足を止めた。
「……そ、そんな」
目を見開いてこの世の終わりというような顔をするドゥーガルド。
茫然自失といった風に立ち尽くしてしまった。
大げさすぎる!
「いや、媚薬だけじゃ、ああはならないだろう」
追いついたアーロンがにやにやと笑う。
媚薬を飲ませた張本人が何を抜け抜けと!
「たぶんお前淫乱の素質があるんだよ。俺が媚薬なしでもああなれるようにまた手伝ってやるよ」
腕を俺の肩に回して耳元でいやらしく囁くアーロンの声に、不覚にも下半身が少し疼いた。
きっとま体に残った媚薬が反応しただけだ。
そうに違いない。
俺は媚薬の名残を振り払うようにして、アーロンの腕を払いのけた。
「丁重にお断りします、クソ野郎」
「なんだよ、昨日はあんなにあんあん言って可愛かったのに。次は完全調教しないとな」
そう言って唇を尖らせるアーロンに、剣の切っ先が向かった。
ドゥーガルドが剣をいつのまにか抜き、アーロンの鼻先に突きつけていたのだ。
「……あれは有り難い僥倖だったと思え。二度目はない」
切っ先よりも鋭い眼光でアーロンを睨みつける。
だがアーロンはどこ吹く風といった様子で、余裕の笑みを浮かべている。
「お前こそ俺のおかげでおこぼれがもらえただけだ。勘違いするなよ。二度目はない」
「……どうやら貴様のものを去勢するしかないようだな」
「ちょ、ちょちょちょっと! なに魔王を倒す前に仲間割れしてんだよ!」
こいつらの仲違いで魔獄島にたどり着けないという最悪な事態だけは避けたい。
せめて殺し合いは俺がこの世界から帰ったあとにしてくれ。
「うるせぇ! お前が淫乱すぎるせいだろうが!」
「まさかの俺のせい!?」
しかも理由がかなり不名誉すぎる。
「……大丈夫だ。お前にまとわりつく虫は全部俺が斬る」
安心させるようにドゥーガルドが微笑みをこちらに向けるが、なぜだろう、安心とは全く別物の薄ら寒いものが背筋を駆け上がった。
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