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「おい! 腐れ淫乱! 一体どういう呪いを俺にかけ……って、何してんだテメェらぁぁぁ!」 俺への罵詈雑言を並べるアーロンだったが、ベッドにいる俺たちの姿を認めると、わなわなと体を震わせて指差した。 そんなアーロンにドゥーガルドは鼻で笑って答えた。 「……見て分からないのか。俺とソウシは今愛し合っていたんだ。邪魔だ。去れ」 「はぁ? 何勝手に人の性玩具に手ェ出して、得意げになってんだよ……っ!」 言い終わるより速くアーロンが剣を抜き、ドゥーガルドに向かってきた。 ドゥーガルドはすぐに俺から離れ、ベッドから飛び降りた。 その後すぐ、ドゥーガルドがいた場所はアーロンの剣で真っ二つに裂け、ベッドの中から羽根が舞った。 アーロンが剣を振り下ろすのとほぼ同時のことで、少しでも遅ければドゥーガルドがベッドの代わりに真っ二つになっていたことだろう。 アーロンが舌打ちして、ドゥーガルドに向き直った。 「なに避けてんだよ。ベッドが壊れたじゃねぇか。テメェが弁償しろよ。俺は一ピーロも払わねぇからな」 「……ソウシと初めて繋がった思い出の品を壊すとは、その命でもって償え。お前なんかの命ではとても償えないがな」 ベッド横に置いてあった自分の剣をドゥーガルドも手にして構える。 その表情は険しい。 「うわぁ、引くわぁ、マジで引く。たかだかセックスで思い出とか言ってんじゃねぇよ。……あ、いや、でも、思い出だな。金輪際お前は一生コイツとセックスどころか触れることもできないんだからな!」 アーロンが床を蹴って、ドゥーガルドに向かって行った。 剣と剣がぶつかり合う音や真っ二つになったベッドに、媚薬でやられていた頭も、酔いが醒めるようにすっかり冷静になっていた。 お、俺のバカぁぁぁぁ!! なにまた快感に流されてんだぁぁぁ!! 俺はベッドの上で頭を抱えてうずくまった。 酔っ払いと違って、記憶に全部あるからまたやっかいだ。 もう自分が本当に嫌になる……。 「死ねっ! 陰鬱根暗野郎!」 「……お前が死ね」 互いに罵りながら、剣を交わす二人のただならぬ不穏さに気づき、俺は慌てて叫んだ。 「お、おい! やめろって! お前ら魔王を倒した勇者様一行だろう! こんな騒ぎ起こしていたら……」 「すごい物音がしてますけど、どうかしましたか?」 ただならぬ音を聞きつけて駆けつけたミシェットさんが、壊れたドアから顔を覗かせた。 壊れたベッドや剣を激しく交わすアーロンたち、そして素っ裸の俺を目にして固まるミシェットさんだったが、やがて唇を震わせると、 「きゃああああああ!」 甲高い悲鳴を上げてこの場から逃げ出すように踵を返した。

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