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△3.lovesick
「なんだ小枝か」
真木はクリップボードを持って、何やら用紙に書き込んでいる。突然目の前までやって来たオレを見るなり、彼は若干勢いに圧倒されて驚いたのか目を見開き、相手がオレだとわかると目を窄め、人差し指で眼鏡のフレームを上げた。
「なんだとは何だよ、失礼だな」
……うう、フレームを上げる仕草さえも格好いい。
だけどオレは、『桜庭が好き』っていうことになっている。見惚れていたことを知られちゃいけない。緩みそうになる口を窄めてなんとか膨れっ面で対応する。
「ああ、すまん。日直か? 一人で?」
真木の手がゆっくり伸びてくる。
ふんっ、とそっぽを向くオレの頭を撫でるのはいつものこと。
多分、オレが真木よりもずっと背が低くて態度も子供っぽいからだろう。オレをうんと年下みたいに扱うんだ。
もしかして真木って子供が好きなのかな。初めて笑った顔を見た時だって小学生といた時だったし。
正直言って、オレにとって、『背が低い』っていうのはコンプレックス以外の何ものでもない。況してや年下に見られるのなんて問題外だ!!
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