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△6.lovesick
「もうすぐ卒業か」
掃除の確認は残すところあとひとつ。最後の教室に辿り着いた時、オレはぽつんと呟いた。
教室の窓から覗く木の枝はまだ裸のままで、冬の空気を纏っている。やっぱり寂しい。
「卒業式の練習はしているものの、実感がわかないな。小枝は進学するのか?」
「うん。オレん家、喫茶店だから。跡を継ぎたいし」
「そうか」
「真木は?」
「俺も進学」
「だよな、真木はオレと違って頭いいもんな……卒業はちょっと悲しいけどさ、オレ、桜が好きなんだよね。だから早く春が来ないかなって思うよ」
「ほぅ?」
「悪かったな、どうせ柄じゃねぇよ!」
「いや、いいと思うよ。俺も桜は好きだ」
そう言った真木の薄い唇は緩んでいる。
笑顔とまではいかないけど、普段目にしているような無表情じゃない。とても優しい顔をしていた。
真木を好きなオレにとって、その威力は抜群だ。
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