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口の中が乾く。本人に告げたわけじゃないのに心臓がドクンドクンと大きく鼓動していた。
頼りないオレの声なんて北風に吹き飛ばされて聞こえなかったかもしれない。そう思ったけれど、桜庭にはきちんと聞こえていたみたいだ。
「やっぱりね。あいつ……真木は何か誤解しているみたいだよ」
「誤解?」
首を傾げれば、桜庭は苦笑していた。綺麗に整っている眉がハの字になっている。
「早めに誤解を解くことをオススメするよ」
「うん、ありがとう」
「大丈夫、君が思うようにはならないから」
桜庭はひとつウインクをすると、ゆったりとした足取りで立ち去った。
オレが思うようにはならないってどういうこと?
そもそも誤解を解こうにも顔もろくに合わせて貰えないんじゃどうしようもない。
残されたオレは桜庭の最後の言葉をどう受け取って良いのかわからず、一人問答を繰り返すばかりだ。
「オレ、どうしたらいいの?」
オレは蹲り、渡り廊下で風に吹かれるがまま、ただ絶望に暮れた。
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