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誕生日に振り回される_2

 俺じゃなくて友達に祝って貰えばいいじゃねぇか。 「神野君、うちらがお祝いするから遊びに行こうって言ったじゃん」  女子のグループがこちらを見ていて、その中の一人、茶色い髪をした派手な女子がものすごい目で俺を睨みつける。 「ありがとうね。でも、葉月との約束が先だったし、わざわざ俺の為にケーキを用意してくれているしね」 「はぁ?」   余計な事をとその眼が俺に言っている。ケーキなんて用意してないし、約束もしていなかった。  それを正直に言おうとしたら、神野に手で口をふさがれた。 「プレゼントも受け取ってくれないし、お祝いもさせてくれないし!」 「そうだよ」  どうやら女子達からはプレゼントを受け取ってないようで、それじゃ余計に怒りの矛先が俺に向く じゃねぇかと神野を恨めしく思う。 「気持ちだけで十分嬉しいよ。じゃ、明日ね」  これ以上は会話をするつもりはないと、俺の鞄を奪うように持ち教室を出ていく。 「おい、待てよッ」  折角祝ってくれるっていっていんだ。向こうに行けよ。俺を巻き込むな!  ムカつきながら神野を追いかけて教室を出る。 「鞄を返せ。で、あいつ等にお祝いしてもらえば良いだろうが」   手を伸ばして鞄を奪おうとするが、寸前でかわされてしまう。 「俺は葉月にお祝いしてもらいたいんだもの」  息がかかりそうなくらいに顔を近づけられて、俺は驚いて慌てて顔を離す。 「近いし。迷惑だ」 「ほら、スーパーに行くよ。荷物、持ってあげるから」 「おい、誰も作るって言ってない。てか、いつの間に俺の財布を奪ったんだよ」  鞄は返してもらったが、ポケットに入れていた財布が神野の手にある。 「あはははっ、行くよ~」  やたらと楽しそうに笑う神野に、呆れながら後に続く。  なんで神野に振り回されなきゃならねぇんだよっ。  買い物を済ませて家に帰る間、荷物を全部持たせてやった。持つと言ったのは神野だしな。 「ただいま」 「おかえりなさい」  玄関で声を掛ければ弟の(とおる)が出迎えてくれる。  透は中学三年生で、俺と違って人懐っこくて可愛らしい顔をしている。いつものように表情を緩めていると、 「そういう顔もするんだね」  神野に言われて我に返る。透の方に意識がいっていたせいか、普段の俺をこいつに見せてしまった。

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