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誕生日に振り回される_3

 からかわれるのがオチだ。すぐに表情を引き締めると、勿体ないと言われて神野を睨む。 「お兄ちゃん、お友達?」 「いや、ただの同級……」 「そう、友達の神野だよ。葉月とは同じクラスなんだ」 「はぁ、友達じゃ」 「そうなんだ。僕は透。よろしくね神野さん。中へどうぞ」  訂正しようとするが、話はどんどん進んでいく。 「宜しくね。お邪魔します」 「いや、だから」 「今ね、ゲームをしていたんだけど、神野さんも一緒にやらない?」 「いいよ」  と、リビングへと向かう。結局、訂正はすることが出来ぬまま俺はキッチンへ。  荷物はテーブルに置かれており、俺はケーキを作る為の材料を取り出し、残りは冷蔵庫へとしまう。  実はおやつ作りも慣れたもの。透の為に作っているから。  まぁ、どうせ神野は貰う専門だろうよ。うらやましくなんてねーから。俺は自分で作れるしって、なんだか虚しい気持ちになるな、これ。 「さて、作るか」  プレーンとココア味のカップケーキを作る。予熱しておいたオーブンへといれて焼きはじめる。焼き上がりは二十分くらい。その間に珈琲をセットし、生クリームを泡立てておく。  そうこうしているうちに焼き上がり粗熱をとったあと、プレーンの方は生クリームでデコレーションし苺をのせる。ココア味は粉砂糖をまぶした。  後は神野の分にハッピーバースデーと書かれたピックを差して完成だ。  皿に二種類のカップケーキをのせて二人の前に出す。 「マジ、うれしい」  ピックに触れ、ありがとうと口元に笑みを浮かべる。女子達がカッコイイと黄色い声が上がる、爽やかスマイル。  俺が同じことをすると悲鳴が上がるヤツな。 「お誕生日おめでとう、神野さん」  透がそう口にした途端、じっとこちらを見る。お祝いの言葉はと言いたいんだろう。だけど俺は知らぬふりをした。

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