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誕生日に振り回される_4

 そんな俺の態度に苦笑いをし、 「葉月、何か言い忘れてない?」  と催促をするように言うので、 「二度も言う必要はねぇ」  俺は冷たくそういい返す。 「えぇっ、葉月からのお祝いの言葉は何度でも嬉しいんだけどな」  そんな二人のやりとりを見て透が楽しそうに笑う。 「お兄ちゃん達って仲良しだね」 「はぁ? 冗談」 「だよね」  俺と神野の声が重なり、互いに顔を見合わせる。  なんだ、その嬉しそうな表情は。イケメン故に破壊力が半端ない。眩しくて目を細める。 「頂きます」 「ほら、さっさと食え。そろそろ塾に行く時間だぞ」 「あ、本当だ。頂きます」  アイスコーヒーをわたし、ガムシロップと牛乳をテーブルに置く。  透は両方入れていたが神野はそのまま飲むようだ。 「頂きます」  生クリームの方を一口。神野が相好を崩す。 「美味い」 「だろう?」  褒められれば気分は良くなるもので、特別にと俺の分の苺を目の前に差し出せば、目を瞬かせて「俺に?」と自分を指さす。 「ほら、あーん」 「……え?」  驚いた顔をする神野にを見た瞬間、透にすることを無意識にしまった事に気が付いて恥ずかしくなる。  流石にこれはねぇよな。  手を引っ込めようとしたが掴まれてしまい、そのまま口元へとはこんでいく。 「なっ」 「うん、美味い」  目を細めて口角を上げる神野の、その表情に胸がざわついた。  何だよこれ。 「ゴチソウサマ」  と髪を撫でられ、目を見開いたまま胸に手を押さえる。  神野は透と話をし始め、俺は落ち着かぬまま、空いた皿を片付け始めた。  透が塾へと行き、部屋に二人きりとなる。 「そろそろ家の事をしたいから帰れよ」 「用が済んだら追い出す訳?」 「そうだよ」  ケーキを食べさせたのだから目的は果たした。神野がいると落ち着かないので帰って欲しかった。 「冷たいな、葉月は」 「ふざけんな」  これ以上、付き合う気はねぇ。無理やりにでも帰らせようかと彼のすぐそばに立つ。 「誕生日なんだからさ、少しぐらい良いだろ?」  ソファーに座ったまま、動こうとしなでこちらを見上げる。 「俺には関係ない」 「関係なく、ないよ」  と腕を掴まれ引っ張られた。

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