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つながる想い

 これから教室でも遠慮はしない。  神野はその言葉の通り、朝の挨拶から始まり、休憩時間には俺の机まで来て一方的に話をしていく。  クラスメイトがそれを見て驚き、田中と女子のグループは俺が気に入らないようでこちらを見ては睨みつけてくる。また絡まれたら非常に面倒くさい。  神野から逃げたいと思うのに、せっかく作ってきた弁当を無駄にはしたくない。で、結局、一緒に食事を摂ることになってしまうのだ。  この前からやたらに距離が近くなった気がする。互いの手が触れ合うくらいの距離にある。 「近ぇよ」  と肩を押すが、すぐに身体を余計に寄せてくる。 「神野っ」  本気で怒った声をだせば、 「葉月が暖かくて、調子に乗った。ごめん」  寂しそうな顔をされて、いささか気が咎める。 「くそ、お前が寄りかかるのは禁止な」  少しだけ事情を知ってしまったから突放せなくなった。頭を乱暴にかき、俺の方から神野に寄りかかった。 「俺は駄目なのに葉月は良いんだ」  俺だって、家族以外の温もりは久しぶりなんだよ。怒ったのも照れからだ。  嬉しそうに微笑む神野に、 「煩い」  とそのまま弁当を食べる。 「うん、今日も美味しい」 「当たり前だ」  この頃は弁当の代りに飲み物をくれる。お茶といちごミルク。時折、それがデザートの時もあり、それがまた俺の好みだったりするものだからムカつく。  今日も一方的に神野が話す形で、俺はそれを聞きながら弁当を食べる。  それを聞きながら食べるのは苦ではない。意外と神野の話は面白い。  たまに笑ってしまい、その度に神野が嬉しそうに俺を見るのだが、何だか落ち着かなくて困る。  普段は人けのない場所だ。神野がつるんでいる奴等も此処には来ない。だが、今日は違った。  やたらと顔の整った男が近寄ってきて、俺は慌てて神野から離れた。

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