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つながる想い_2
「わー、美味そう」
笑顔を向けられ、俺は躊躇う。
今までこんな笑顔を向けてきたのは神野くらいで、大抵の奴は怖がって近寄ってこないからだ。
「おう、慧 」
神野の知り合いか?
慧と呼ばれた男をまじまじと見れば、何処かで見た事があるような気がした。
「俺にも頂戴」
俺が誰なのかと気にすることなく話しかけてくる。なんてマイペースな奴なんだろう。
「誰だよ、コイツ」
「同じクラスの御坂慧 だよ」
と神野が紹介すると、御坂が何故か悲しそうな表情を浮かべた。
「酷いなぁ、葉月。一年の時も同じクラスだったのに」
だからか。何となく見たことがある気がしたのは。
「慧、この頃はモデルの仕事が忙しくて、あまり学校にこないものな」
「そうなんだ」
そういう訳じゃない。覚えても仕方がないと諦めていたから。こんな華のある男すら頭の片隅にしかなかった訳だ。
「ま、いいや。おかず貰い」
と、ぼんやりと御坂を見ていたら、長い指が俺のおかずをさらっていく。
「あぁっ!」
「美味い。もう一個」
更におかずをとられて、これ以上はと弁当を隠した。
「ふざけんな。お前も神野と同類か」
俺の事を怖がらないのも、図々しい所も、イケメンな所もそっくりだ。
「えぇ、俺は聖人みたいに腹黒じゃ……」
「慧」
「えー、もう少し食べたい」
じっとこちらを見つめられ、これ以上はあげないと頭を振るう。
「駄目だって言ってるだろ」
「わかったよ。じゃぁ、また今度頂戴ね」
と肩を叩かれて出入り口へと向かっていく。
「流石、お前の友達だよ」
「いや、珍しいよ。アイツが食べるのって」
「え?」
「信じている物しか口に入れない。あぁ、そうか。俺が同じものを食べていたからかな」
それ以上は何も言わず、弁当を食べては美味そうな表情を浮かべていた。
俺も深く知りたいとも思わない。それから話題はたわいのないものへとうつっていった。
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