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つながる想い_4

 何故、こいつがここにいるんだ。    驚く俺に、爽やかな笑顔を向ける。 「おはよう、葉月。一緒に学校に行こう」 「冗談じゃねぇ」  朝から周りにどんな目で見られる事やら。それを考えただけでウンザリとする。 「今日、俺の分のお弁当、ないんだ」 「大体さ、俺がお前の分まで作ってやる必要なくねぇ? 女子に作ってもらえよ」  好きという気持ちがたくさん詰まっている弁当だ。愛情に飢えている神野には丁度良いだろう。 「俺が欲しいのはあざとい愛情のつまった弁当じゃなくて、食べる人の事を考えて作られた弁当だ」 「は、それなら女に頼んで……」 「あぁ、もうっ、回りくどい言い方はやめる。葉月の作ったお弁当がイイの」 「なっ」 「お前の弁当を食べていると、冷たかったここが暖かくなるんだ」  と神野が自分の胸に手を当てる。 「そんな事を言われても」  困る。  自分の作った物で暖かい気持ちになるなんて、そんな事を言われたのは初めてだ。 「顔、真っ赤」 「うるさい」 「かわいい」  そうはっきりと言われるようになったのは、つい最近の事。誕生日にカップケーキを焼いてやった日からだ。  俺は女じゃねぇし、しかも周りから怖がられている奴に言う台詞じゃない。 「お前の目は腐ってんのかよ」 「ごめん」  ふ、と、唇に柔らかいものがふれた。  俺、アイツとキスしてる? 「んぁっ」  舌が歯列を撫でて舌に絡みつく。それがぞくぞくするくらい気持ち良くて、頭がぼっとしてきた。 「きもちいい?」 「う、ぁ」 「おれも」  ちゅっと音をたて、唇が離れる。 「あぁ、涎」  親指で唇を拭われ、そこで我に返って後ずさる。 「おま、何をっ」 「キス」 「なんで」 「なんとなく」  しれっと言われて、俺の手が神野の頬を殴っていた。 「いたぁっ」 「さっさと学校に行けよっ!」  出て行けと玄関を指さす。 「葉月」 「俺は、なんとなくでキスしねぇ」  馬鹿にされた。アイツにとってなんでもない事なんだ。 「え、あ……」 「出てけよ」  狼狽える神野の肩を押すが立ちつくして動かない。それに痺れを切らし、腕をつかむと乱暴に引っ張りながら玄関へと向かう。 「まって、違う」 「二度と来るな」  言い訳なんて聞きたくない。神野を外へと追い出すと玄関のドアを乱暴に閉じた。

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