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つながる想い_5

 神野に逢いたくないから学校に行かない、という訳にはいかない。  時間ぎりぎりに教室へと入ると神野と視線が合ったが、それを無視して机に顔を伏せる。  視線を感じたが、俺は顔をあげようとはせず、すぐに担当の先生が来て授業が始まった。  昼になるとすぐに神野が俺の席へと向かってきたが、弁当を手に教室を出る。  屋上へ行くわけにいかないので人目のつかない別の場所で食べる事にした。  久しぶりに静かな昼食。  何かが足りなく感じ、左側の腕を見る。  少し触れ合った位で嬉しそうにする神野。そうだ、アイツになんとなくでキスをされたんだ。 「くそっ」  弁当の味がしない。こんな事、はじめてだ。 「こんなところで食べているの?」  声を掛けてきたのは御坂だ。 「お前こそ、なんで?」 「うーん、教室に行くと女の子がうるさいから。一人になりたいなって時にここに来る」  前にモデルをしていると神野が言っていたっけ。背は俺と同じくらいだから180センチはあると思う。  たれ目な甘いマスクをしており、そこは正反対だ。ただ見ているだけで、御坂なら女子の目をハートにかえるだろうが、俺は怯えさせるだけだ。 「そうか」  御坂が隣に腰をおろし、すっと手が伸びて里いもを煮た物を摘まんだ。 「あっ」 「おいしい」  やたらとキラキラした笑顔で言われて、俺は怒るのをやめて食べかけの弁当を御坂に押し付けた。 「お前は自分が信じられるモノしか食わねぇんだろ?」 「聞いたんだ」 「あぁ」 「小さな頃、誕生日の日に無理心中を計った母親に殺されかけてね。食べた量が少しだったから一命は取り留めたんだけど、両親は死んじゃってね。モノを食べるのが怖くなっちゃってさ」  親に殺されそうになったなんて、想像がつかなくて何と言っていいのか解らずに口を結ぶ。 「やだなぁ、そんな顔しないで。一時期はトラウマで拒食症になっちゃったんだけど、彰正(あきまさ)の家の人がさ、暖かく迎え入れてくれね、なんとか食べられるようになったんだ」  彰正とは尾沢の事だと後で付け加える。 「そうか。じゃぁ、なんで俺の作ったモンは食えたんだ?」  俺と御坂はただ同じクラスというだけの関係だ。そんなトラウマがあるというのに何故、俺の作った物を食べたのだろう。

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