16 / 31
つながる想い_6
そのこたえは「神野が気を許していたから」からだった。
「どういうことだ。アイツは誰にでもそうだろう」
あいつは誰とでも仲良くできる男だ。俺とだってコミュニケーション能力が高いから話せるだけだろう。
だが、御坂は違うと首を振るう。
「聖人の家の事は聞いた?」
「あぁ」
「周りにいるクラスメイトとは上辺だけの付き合いで、聖人は信じた者しか自分のテリトリーに入れない。だから俺も君を信じられるなって」
「いや、でも……」
神野と御坂は深く互いを信頼し合っている。別にそれは俺には関係ない事だからどうでもいい。
だからといって俺まで信用しようとしないでほしい。
「困る? でも、君はお弁当を作ってあげていたんだよね」
「アイツが勝手に食うから」
「本気で拒めばいいだけだよ。そうしたら近寄らない」
その通りだ。関わりあいたくないと思いながらも、美味しいと言って食べてくれるのが嬉しいから、本気で拒まないんだ。
「駄目だよ、そんな顔をされたら僕だってつけあがっちゃうかも」
そっと顎を掴まれると顔を上向きにされ、御坂の顔が近づいてくる。
キスをされるとそう思い、俺はガードをするように腕をクロスにし隠した。
「ほら、ちゃんと拒めるじゃない」
「え?」
顎から手が離れ、御坂が自分の唇をトントンと指さす。
「聖人にされたんでしょう?」
何故知っているんだと御坂を見れば、電話があったのだと教えてくれた。
まさか相談していたなんて、恥ずかしくて頬が熱くなった。
「信じられねぇ! 言っておくけど無理やりだからな」
「そうなんだ。すごく落ち込んでいたみたいだけど、無理やりキスしたんじゃ、聖人が悪い」
俺は葉月の味方だよと頭を撫でられて、その手を振り払おうとしたけれどやめた。慰めるように優しく撫でてくれたからだ。
「御坂、ありがとう」
「うんん。ねぇ、お弁当、食べないの?」
今日は母親のリクエストで炊き込みご飯にしたのだが、それを少し食べただけで箸が止まっていた。
「あぁ。おかず、食うか」
「ありがとう。ごはんも食べて良い?」
「食べかけだぞ。それでも良いなら」
葉月の残りだから大丈夫と笑い、お弁当の中身を全て平らた。
ともだちにシェアしよう!