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つながる想い_12

 この姿を見れば何をしていたかなんて一目瞭然で、神野に見られる前に家へと帰ろうと思っていた。  それなのにタイミング悪く、女子と一緒に教室へと戻ってきて、俺の姿を見るなり近寄ってきた。 「葉月、何があったの」  神野の姿を見たら何故か目元が熱くなってきて、俺は何も言わずにカバンに弁当箱を突っ込んで肩に掛ける。 「葉月」 「うるせぇよっ」  これ以上は話しかけないでくれ。泣いてしまう。  俺は何も言わずに教室を飛び出した。  屋上で起きた事はすぐに教師にも伝わり、俺は一週間の停学処分になった。  仕事で忙しいのに学校に呼び出される事となり、母親には迷惑を掛けてしまった。  今までも良く絡まれてはいたが、学校の中で喧嘩をした事は無かった。大抵、怖がられて近寄ってこないから。 「アンタが怪我してたの見て、そろそろ呼び出されるんじゃないかなって思ってた」 「殴った理由は聞かないのか」 「聞かない。子供同士の喧嘩だもん。悟郎は気にくわないからって人を殴るような子じゃないし」  殴られた奴等は俺が一方的に悪いと言っていたようで、教師もそう思っているのは表情を見て分かった。だからずっと黙っていて何も言わないでいた。 「それに貴方の事を心配してくれるお友達もいるようだしね」 「……え?」  母親の視線の先、そこに神野が立っており、 「なんで」  驚いて俺は目を見開く。 「何で、じゃないよ」  その表情はかたく、怒りを含んでいるような、そんな目をしていた。 「母さんは先に帰っているわね」  と肩を叩き、俺を置いて行ってしまった。 「何があったのか、人伝えでなく君の口から聞きたい」  腕を掴まれ、払い除けようとも強く握りしめられていてできない。 「離せよ」 「嫌だ」  強引に連れて行かれたのは保健室で、養護教諭の姿はなく、ベッドの上へと乱暴に突き飛ばされる。  俺はすぐに身を起こそうとするが、二人分の重さで軋む音を立てながら組み敷かれた。 「神野、てめぇ」 「どうして言ってくれないんだ」  顔を胸へと押し付け、その身が少し震えているのに気がつき、目を見開く。 「お前」  泣きたいのを我慢している、そんなふうに感じたからだ。

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