22 / 31
つながる想い_12
この姿を見れば何をしていたかなんて一目瞭然で、神野に見られる前に家へと帰ろうと思っていた。
それなのにタイミング悪く、女子と一緒に教室へと戻ってきて、俺の姿を見るなり近寄ってきた。
「葉月、何があったの」
神野の姿を見たら何故か目元が熱くなってきて、俺は何も言わずにカバンに弁当箱を突っ込んで肩に掛ける。
「葉月」
「うるせぇよっ」
これ以上は話しかけないでくれ。泣いてしまう。
俺は何も言わずに教室を飛び出した。
屋上で起きた事はすぐに教師にも伝わり、俺は一週間の停学処分になった。
仕事で忙しいのに学校に呼び出される事となり、母親には迷惑を掛けてしまった。
今までも良く絡まれてはいたが、学校の中で喧嘩をした事は無かった。大抵、怖がられて近寄ってこないから。
「アンタが怪我してたの見て、そろそろ呼び出されるんじゃないかなって思ってた」
「殴った理由は聞かないのか」
「聞かない。子供同士の喧嘩だもん。悟郎は気にくわないからって人を殴るような子じゃないし」
殴られた奴等は俺が一方的に悪いと言っていたようで、教師もそう思っているのは表情を見て分かった。だからずっと黙っていて何も言わないでいた。
「それに貴方の事を心配してくれるお友達もいるようだしね」
「……え?」
母親の視線の先、そこに神野が立っており、
「なんで」
驚いて俺は目を見開く。
「何で、じゃないよ」
その表情はかたく、怒りを含んでいるような、そんな目をしていた。
「母さんは先に帰っているわね」
と肩を叩き、俺を置いて行ってしまった。
「何があったのか、人伝えでなく君の口から聞きたい」
腕を掴まれ、払い除けようとも強く握りしめられていてできない。
「離せよ」
「嫌だ」
強引に連れて行かれたのは保健室で、養護教諭の姿はなく、ベッドの上へと乱暴に突き飛ばされる。
俺はすぐに身を起こそうとするが、二人分の重さで軋む音を立てながら組み敷かれた。
「神野、てめぇ」
「どうして言ってくれないんだ」
顔を胸へと押し付け、その身が少し震えているのに気がつき、目を見開く。
「お前」
泣きたいのを我慢している、そんなふうに感じたからだ。
ともだちにシェアしよう!