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つながる想い_13

 そっと頬に触れれば、その手を掴まれる。 「本気で心配したんだぞ」  切なげに言われ、それが痛い程伝わってきた。 「あぁ、そうだな」  もう一度、ごめんと呟き、あの日起きた事を神野に話し聞かせた。 「そうか」 「殴った事は本当だ。だから処分は受ける」 「わかった」 「神野、ありがとうな」  今まで誰も相手にしてくれなかった俺の事を、こんなにも心配してくれたのだから。  その想いが、俺の胸を熱くさせる。 「葉月」  顔が近づいてきて、俺はそのまま神野のキスを受け入れた。  目の端からこぼれ落ちた雫が頬を伝う。  唇が離れると、神野がそのまま肩の当たりに顔を埋め、待っていると呟いた。 「停学開けたらさ、また四人で弁当食おうぜ」  その時は皆の好物を一つずつ詰めよう。 「約束だぞ」 「あぁ、約束だ」  小指同士を絡めあい、微笑んだ。 ◇…◆…◇  停学があけ、学校へと向かう。  教室に入るなりざわつきが止まり皆の視線が俺へと向く。そりゃそうだよな。いつかこうなるだろうと思っていただろう。  田中らも俺に絡むのはこりごりしたのか、視線すら合わせてこない。それに関してはせいせいした。  クラスの奴等にどう思われようが俺を心配してくれる奴がちゃんといる。だから、それでいいんだ。 「おはよう、葉月」  初めに声を掛けてきたのは神野で、続いて尾沢が俺に声を掛ける。 「……おはよう、神野、尾沢」  待ってたよと神野の手が俺の肩へ触れる。 「休んでいる間の授業の内容だ」  と尾沢からはノートのコピーを手渡された。 「サンキュ。飯、作ってきたから。後で御坂も来るんだよな?」  停学中に心配して電話をしてきてくれたのだ。御坂にも話をしたし、絶対に今日は学校に行くからと言っていた。 「あぁ。お弁当、楽しみにしてた」 「俺も」 「はは、気合入れてきたから」  神野の好物は知っているし、二人の好物は御坂から聞いてある。  そこに俺の好物も入れた。皆に知ってもらうためにだ。  いつのまにか教室はいつものざわめきを取り戻しており、しかも一部の男子に「おはよう」と挨拶をされた。  どういう事だと神野を見れば、何も言わずにただ苦笑いするだけだった。    

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