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つながる想い_14

 弁当は三人に好評だった。  俺の好物であるいとこ煮を見た時、納得と神野に言われ、甘いものが好きな事をばらされる。  こんな見た目をしているせいか、引かれるかなと思ったが、特に気にしていないようだ。 「俺も甘いの好き」  一緒だねと、いとこ煮に箸をのばし、おいしいと御坂が喜んで食べていた。  神野と尾沢は肉系が好きでこってり目のものが好きだ。角煮は二人のツボにはいったようで、また食べたいと言われた。  透も好物なので、ついでに作ってやるよと言えば、「ついでかよ」と言いつつも嬉しそうにしていた。  弁当を食べ終え、御坂は尾沢と勉強をするからと図書室へ。  俺達はこのまま教室で時間まで過ごすのかと思いきや、話があるからと人気のない場所へと連れて行かれた。 「話って?」  だが、動いたのは口ではなく手で、俺は神野に抱きしめられていた。 「恋人になってください」  本気なのは十分解っている。  俺だってそういう意味で神野の事を好きになっている。だけど素直に言えるかってぇの。 「お前の事は……、嫌いじゃねぇよ」  と答えれば、神野に苦笑いされた。  だって、俺の気持ちはなんとなく察しているんだろう? 口に出さなきゃ解らねぇとか、駄々をこねたら殴るからな。  熱い頬を冷ます様に手で扇ぎつつ軽く睨みつける。 「じゃぁ、良いよね」 「え、何が?」  素早く唇を奪い、そして耳を舐められた。 「ひゃぁっ」  変な声が出て、死ぬほど恥ずかしい。  それを誤魔化すように怒る。 「てめぇ、いきなり……」 「悟郎」 「へ?」  急に名前で呼ばれ、一瞬、ぽかんとしてしまったが、ぶわっと熱がこみ上げた。  なんだ、これ。親に名前を呼ばれてもこんな風にはならなかった。 「お前、俺の事を名前で呼ぶの禁止っ」  慣れるまでこんな調子じゃ俺が落ち着かない。 「えぇっ、恋人同士なのに」 「ぶほっ」  こ、恋人って、本当、お前、いきなりすぎんだよ。  まだ心の準備が出来てねぇってぇの。  あぁ、駄目だ。俺、このまま恥ずかしさで死ねる……。 「お前、教室へ戻れよ」  一人になって胸のドキドキを落ち着かせたい。  なのに神野の手が俺の胸へと触れ、そしてニヤニヤとこちらを見る。 「すごいドキドキしてるね」 「神野!」  くそ、嬉しそうにするな。  ムカついてその手を払いのけた。 「教室で待ってるな、悟郎」 「な、なっ」  俺は怒りに唇をわなわなさせる。  投げキスをし教室へと戻る、その姿を眺めて俺はその場に座り込んだ。 【了】

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