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第101話
「お前が泣かせてどうする」
優作は慎二郎の額を指で軽く押す。慎二郎はその手から逃れるように顔を振りつつ、困ったように眉が下がってしまっていた。
「これは……さ、佐奈泣かないで」
「ごめん……。これは嬉し泣きだから」
「そっか」
照れ臭そうに笑う慎二郎に、佐奈は笑顔を見せた。
慎二郎は先に登校したため、家には優作と二人きりだ。
佐奈も制服に身を包み、リビングでテレビを見ている優作の隣へとソファに腰を降ろした。
優作はテレビを消し、佐奈へと身体を向ける。
「佐奈、ありがとうな。お前も色々と複雑だろうけど、アイツの気持ちを思いやってくれてマジで感謝してる。やっぱり、何だかんだでアイツは可愛い弟に変わりないからな」
佐奈は控えめに頷きながら、やはり二人は血の繋がった兄弟なんだと痛感する。
その繋がりにはどうしたって佐奈には敵うわけがない。しかし血の繋がり以上に、三人は確かな絆で繋がっている。
自分は本当に恵まれ、幸せだということを佐奈は心の奥深くまでそれを刻み、感謝した。
「オレはいつも慎二郎に励まされ、助けられてたんだ。だから……凄く調子いいこと言うけど、オレは慎二郎が困っていたら、直ぐに手を差し伸べたい。ずっと味方でいたい」
「あぁ、そうだな。かなり妬けるけどな」
優作は佐奈の唇に軽いキスを落とし、魅力的な笑みを佐奈に向けた。
こうしてキスをされると、自分は本当に優作と想いが通じ合ったのだと実感させられる。
くすぐったい気持ちの中で、恋愛初心者の佐奈にとって、こういう時どんな顔をすればいいのか分からず俯いてしまう。
そんな佐奈の頤を掴んで顔を上げさせると、優作は深く唇を重ね、時間いっぱいまで二人の時間を堪能した。
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