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第102話
朝の通勤、通学で混み合う列車から、佐奈と優作はホームに降り立つ。列車の中や、ホームでは優作は相変わらず注目の的となっている。
女性会社員、女子学生だけでなく、男性からも羨望の眼差しを向けられている。
自分に向けられているわけではないのに、佐奈は隣に立っているだけでそのプレッシャーは相当のものだった。それを優作は全く歯牙にもかけない。
ある意味感心してしまう。
「そう言えば、昨日三國先生は大丈夫だったのか?」
「あぁ……」
優作は苦々しく口角を下げる。
優作のバイト先であるジムは学園から歩いて十分程の場所にある。
三國は何度か優作のジムに通ってるらしく、昨日はランニングマシンで降りる時に足元がふらつき、そこで捻ったようだ。
「トレーナーに医師免許持ってる人がいて、診てもらったんだよ。軽く捻った程度で大丈夫だったんだけどな。でも本人痛がるし、とりあえず俺の担任だしって事で送っていけって言われてな」
「なるほど……」
そういう流れになるのは当然かもしれないと、佐奈も納得する。
そして駅まで三國を歩かせているときに、慎二郎から電話があった。
この上ない焦燥に駆られた優作は、駅前ロータリーに停車するタクシーに三國一人を乗せた。
そして自身も別のタクシーで帰ろうかとした時、タイミングよくホームに列車が入って来るのが見え、直ぐ様飛び乗ったようだ。
もし、あの時優作が三國を送っていたとしたら、きっと想いは通じ合わなかったのではないだろうか。慎二郎にあそこまで言われて戻ってこない事も大いに傷付くが、相手が三國ということが佐奈の中で余計に溝をつくっていたかもしれない。
そう思うと、余計に今の幸せを強く実感することが出来た。
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