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第103話
「佐奈、昼飯はブレイクルームで一緒に食おう」
「うん」
佐奈の心が弾む。嬉さと照れが混じり、佐奈の頬が僅かに赤く色付く。
「佐奈……」
「ん?」
呼ばれて顔を上げると、優作は何とも複雑そうな顔をしている。
佐奈はそんな優作に、少し眉を寄せつつ目で問いかけた。
「頼むから朝からそんな可愛い顔を見せるな」
「なっ……可愛いって」
学園までの一本道の往来。
優作のセリフにギョッとして振り向く若いサラリーマンは、優作の顔を見るや、今度は別の意味で驚いたように見る。そして佐奈に視線を移し、今度は目尻が少し下がった。
だが直ぐに慌てたように前を向き、そそくさと歩いて行ったのは、優作が睨んだからだ。
「もう、こんな往来で変なこと言うのやめろよ。それでなくても優作は目立つのに。さっきの人なんか、凄い引いてたし」
「あれは引いてたんじゃなくて、佐奈を……」
「オレを?」
訊ねる佐奈に優作は呆れたように嘆息した。
「何でもない……気を付けるよ」
答えるのが面倒になったのかは定かではないが、優作はそう締めくくった。
「おはよ、佐奈!」
優作と別れ、自分の教室へと向かう回廊で、佐奈は背後から肩を叩かれる。
振り向くと馴染みの顔。
「元、倉橋、おはよう」
「相変わらずお前ら兄弟仲良いよなぁ……。というか深山先輩は佐奈しか眼中ない感じだけどな」
「間違ってはいない」
倉橋が元には聞こえないようにボソリと言う。佐奈がそんな倉橋を軽く睨むふりをすると、倉橋は悪戯っぽく赤い舌を少し覗かせた。
元が先に教室へ入り、仲の良いグループに混じっていくのを見送ってから、佐奈は倉橋に視線を戻した。
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